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(5)地方自治の個別事例

新地方自治法は、各構成主体ごとに独自の地方自治法を定めることを予定しており、その具体的な事例についてはあまり報告がなされていない。冒頭に紹介した「ウドムルト」問題などに見られるように、実際には新地方自治法の施行段階でさまざまの問題が惹起していることが予想されるし、断片的な報告からもそのことが十分にうかがわれるのであるが、個別自治体の調査を行なっていない現在の段階では、これまた概況を整理するにとどまらざるをえない(28)。

当然ながら、州や地方の憲章は地方自治の地位についてもふれ、地方自治は地方的意義を有する問題の解決に市民の参加を保障する自立的で責任ある市民の活動として規定している。いくつかの憲章では、地方団体、すなわち自治的領域内に居住し、共通の需要と利益で結び付いた市民の連合を直接に地方自治の主体と呼んでいる。これらの憲章で共通しているのは、地方自治を直接的な人民権力によりおよび地域の自治機関をとおして実現すると定めていることである。「市民の連合」というのは、その含意が大でありかつ広く、地域的社会的自治機関と公共団体としての地方自治体とを混同するもとともなりかねない。

地方自治の地域的単位については各憲章で食い違いがある。大部分の憲章は、憲法モデルを採用し、自治は、市、村落の居住区およびその他の地域において実現されるとしているが、オレンブルグ州憲章は、地方自治が市、村およびその他の住民の居住区、地区においても実現されるうることを承認し、ノヴゴロド州憲章は、地方自治は州の行政的・地域的単位の枠内でこれを実現するとやや異なった規定をしている。つまりは、地域的原則についての見解は、けっして一様ではない。その実態は、個別の市町村の調査によらなければならないであろう。

手元にあるその他の地方の「地方自治法」についても若干ふれておこう(29)。ノヴォシビルスク州タタール地区の地方自治規程は、地区の自治体としての性格づけを行なっている例で、地区の代表機関は、54人の住民代表(スホートで選挙)と行政長官、2人の次官からなるとし、行政長官は5年任期で住民が直接に選挙する。次官は代表機関が任命する。なお、代表機関の議員の任期の定めはない。ノヴォシビルスク州の「地方自治の組織の原則について」の臨時規程は、自治体の代表機関を村ソヴィエトとし、定員を15以下と定めながら、選挙が行われるまでは選挙された議員と村の居住区の区長によって代表機関を構成するとしている。村ソヴィエトの廃止以降、多くのところがこうした手法をとったものとみていいだろう。行政長官は議会の活動を組織すると定められているが、これまた執行機関優位の自治体運営をもたらしかねないという疑念を覚える点である。オムスク州では、代表機関の任期を2年とし、人口5千人〜1万5千人の自治体では7人、それ以上のところで9人とその定数を定

 

 

 

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