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開されるのが通常である。

やや一般的な表現で述べてきたが、体制移行諸国もこのような状況に遭遇していたといえよう。

 

(2)社会主義時代の遺制

体制移行諸国が、数年前まで採用していた社会主義体制については、すでに多くが語られ、その実態から問題点、崩壊の理由まで数多くの論稿が発表されている。したがって、ここではそれについての再論は避けるが、上述したような制度理念ないし原理の転換という観点から、簡単に整理しておくならば、これらの諸国における社会主義体制とは、まさに国家統合・経済発展をめざして形成された最も先鋭なシステムであったといえよう。

そのシステムとしての特徴を、批判をおそれず単純化していえば、国家として最も効率的な生産・経済のシステムを構築するために、制度上、地域やその他の差異を否定し、限られた資源を最も効率的に重点投資すべく、極度に集権的なシステム構造を作り上げたことであろう。そして、それを実現するために、システムの全要素を管理の対象とし、合理性を限りなく追求した経済計画に従って、その要素を管理しようとしたことである。

このような政策によって、それまでそれぞれ独自のアイデンティティを有し、個性をもった自治をめざしてきた自立的な地域も、基本的にシステムの一つの部晶として位置づけられ、全体を一つのシステムとする国家内の分業の担い手として機能的に特化されてきた。すなわち、全体としての効率化を図るために、地域間の分業体制が形成されてきたのである。この地域間の分業体制は、旧ソ連においてはもとより、東欧を含む社会主義圏全体で追求された。それは広範な社会主義体制内の分業構造である。

さらに、このような体制を構築し、維持するために、システム内における価値の多様性を否定した。それは、それまで存在していた多様な思想や宗教、文化、地域の自治の否定、すなわち社会的自由・人権の抑圧と、体制イデオロギーの強制にみられる。要するに、中央にいる思想的前衛たる政治リーダーの決定の下に、システム全体が動く仕組の構築がめざされていたといえよう。

しかし、このような仕組を現実に動かすこと、とくに広大な国家内の諸要素を把握し、管理することは容易なことではない。その管理のための仕組は、皮肉なことに、現実には、巨大で非能率な官僚機構を作り上げた。そして、それに加えての、自由の抑圧による活力の減退が自由主義圏の諸国との格差を生み、それが体制崩壊へのドライブとなったといえよう。

 

 

 

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