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礎自治体それぞれの規模と数をどのようにするか、という論点である。連邦制を採用している国の場合は、連邦の構成団体はほぼ与件であり、問題は連邦政府と州ないし邦政府の権限配分の問題となる。ただし、現在のロシアの場合のように、連邦制を採りながらも、その構成単位が必ずしも自明ではなく、地方制度の改革にともなって、主権を有する自立性の高い単位への昇格要求が起こり、基本構造が不明確になっているケースもある。

単一主権国家および連邦の州ないし邦内部においては、伝統的な自然村を単位とする自治体を設置する場合、その規模は当然小さく数も多くなる。しかし、国家統合ないし国レベルでの統治の観点からみた場合、あまりに規模が小さく数が多い場合には、行財政能力が低く、行政効率が悪い。そこで、広域団体を設け、それに多くの権限をもたせるか、基礎自治体にしても合併・統合を推進し、規模の拡大を図ることがしばしば行われる。

その点と関連して、広域団体をその地域の住民を代表する、中央政府の外部に存在している自治体として構成するか、それとも中央政府の下部機関たる行政区画として位置づけるか、という点も重要である。前者の場合には、分権的な制度ということができ、後者の場合は、集権的である。実際には、たとえばフランスのように、広域単位に自治体と国の機関を並立させて設置する例もみられる。

 

(2) 事務の配分

中央政府と自治体との間で、行政のいかなる事務を、どの程度配分し分担しているかという論点である。一般に外交や国防、大規模な開発等は中央政府が受けもち、国民生活に密着した福祉やまちづくりは自治体が担当している国が多いが、国土管理や産業政策になると、その自治体の行財政能力によって、中央が担当している場合もあれば、自治体が受けもっている場合もある。

後者の場合は、当然地方自治の範囲が広い。なお、地域住民の生活にとって重要な教育と治安維持を担当する警察に関する事務は、前述の国家統合のためのイデオロギー政策の観点から、中央政府が直接行っていることも少なくない。しかし、自立性をもった地域の側からみれば、自らの言語や文化、伝統を次世代に伝えていくための教育および社会秩序維持のための警察は、地方自治の中核をなすものといえよう。だが、それゆえに中央政府にとっても重要なのである。

 

(3) 首長と議会

自治体の運営機関である首長および議会の代表を、どのような手続で選出するかということは、中央と地方の関係を規定する最も重要な要因であるといっても過言

 

 

 

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