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県の憲法上の位置づけについては、<1>都道府県が憲法上の地方公共団体であるが、それは改廃できる、<2>都道府県は憲法上の地方公共団体ではないので改廃できる、という二つの論理が可能である。<1>によれば、何が憲法上の地方公共団体であるかは憲法上明確ではなく、法律の定めに委ねられており、したがって、立法者が都道府県を地方公共団体として組織した以上はそれは憲法上の地方公共団体となるが、その改廃は立法者の広汎な裁量にまかされている、と解することになる。この論理は、「現行憲法が保障しているのは、都道府県、市町村の名ではなくて実質」であり、「制度の改変が自治を活気づけるものであれば、二重構造は必ずしも保持されなくてよい。市町村制すら変更を受けてもさしつかえあるまい」とする説(11)に呼応するものであり、また、二層制を前提としつつも道州制への移行は憲法上可能とする前述の有力説にも通ずるものである。憲法上の地方公共団体の意義が法律によって明らかにされるとともに、それが憲法上の地方公共団体となるという論理は、憲法と法律の相互依存の関係を前提とするもので、論理的には明断を欠くが、しかし、憲法の地方公共団体の意義を法的に究明すれば、この論理が最も適切なものであるように思われる。

(3)「準地方公共団体」の論理とその問題点

 これに対して、<2>のように、都道府県が憲法上の地方公共団体ではないと解しつつ、なお都道府県を国の行政機関へと改変することが許されないとする場合には、都道府県が地方公共団体に準ずる地方行政組織であり、そのような準地方公共団体には憲法の地方自治の保障の趣旨が及ぶべきである、という論理を採ることになる。すなわち、都道府県をいわば「準地方公共団体」と位置づけ、都道府県を憲法上の地方公共団体ではないが、地方公共団体に準じて地方自治を担当する地方団体であると構成するものである、この論理は、憲法上の地方公共団体を固定化せず、地方自治の組織運営の弾力化を図ろうとしている憲法の趣旨に適合すると思われるが、ただし、この論理には「立法権」=「条例制定権」との関係でなお重大な問題がある。すなわち、憲法上の地方公共団体であれば、憲法93条によって議会を設置し、議員および長を住民が選挙によって選ばなければならず、また、憲法94条によって条例制定権が付与されるべきことになるところ、都道府県や特別区が憲法上の地方公共団体ではないとすると、法律によって長の公選制を導入することは憲法上可能

 

 

 

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