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れよう。このような例としては、無人の島や国有地という特定地域の統治が考えられるが(4)、首都地域については、<1>首都地域という特定された領域について、<2>首都のもつ、立法機能、外交関係機能、国際交流機能、特別警察機能などの特殊な機能を効率的に達成する必要が認められる以上、それを地方公共団体として組織せず、特別の地方行政制度を導入することが可能であると思われる。憲法上首都を国の直轄とすることができると説く憲法学説(5)のあることも、以上のような趣旨から理解することができよう。

3 憲法上の地方公共団体の意義

(1)憲法上の地方公共団体の意義

 憲法上の地方公共団体の意義について、憲法は「地方公共団体」とよぶのみで、どのような団体がそれにあたるのか具体的に指摘していない。これは、憲法制定過程の議論によれば、憲法で地方公共団体を明示することは避け、時代や社会の実情に応じて立法者が弾力的に地方公共団体について定めることができるようにしたためであるといわれる(6)。憲法上の地方公共団体の定義について、東京都特別区の区長公選制の廃止との関係で東京都特別区が憲法上の地方公共団体がどうかが争われた事件で、最高裁(最大判昭和38・3・27別集17巻2号121頁)は、憲法上の「地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とする」と述べている。定義としてはやや明確性に欠けるが、憲法から地方公共団体の意義が一義的に導き出されない以上、憲法上の地方公共団体がどうかは、判決のいうように、実際の地方公共団体とされている組織の実際の組織・権限の内容、執行事務の内容等を総合的に判断して決定すべきことになろう。
 市町村が憲法上の地方公共団体であることは、学説・判例上広く認められている。住民のための基礎的な行政を担っている市町村は、憲法上の地方公共団体とよぶ

 

 

 

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