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DCは159km2)16)。DCは、首都としては面積が小さく、とりわけ人口が桁違いに少ないことから、税源として期待できる周辺の居住地を十分に取り込めておらず、他の首都と比べても、首都の財政が人口移動の影響を大きく受けるものと推測される。
 DCの供給する公共サービスの受益とその負担との一致および住民自治の促進という観点からは、DCとDCへの通勤圏となっている郊外地区を合併し、郊外の住民がDCから受けている受益に応じて納税し、それをDC地区の財源に充てるのが望ましい。しかし、周知のとおり、DCの郊外はヴァージニア州やメリーランド州に属しており、州権の強い連邦制の建て前からして、DCと通勤圏の郊外を合併して、拡大DCをつくることは困難であろう。
 しかし、連邦政府がDCの財政に介入するという現行の方法は、DCの自治権を侵害するという点で、さらに連邦政府の資金が財政再建に使われる場合には、必ずしもDCから便益を受けない人が費用の負担をすることになるという点で望ましいとはいえない。他方で、連邦政府が介入せずに、DCの財政を建て直す方策として、以前から主張されているものとして、DCの公共サービスから便益を得た非居住者への課税権をDCにも認めるというものがある17)。注の9で述べたように、他の都市ではこれが認められており、受益と費用を一致させる方法として望ましいものである。ただし、非居住者ということでDCの政治に参加できない場合には、DCへの参政権の観点から問題が生じるだろう。
 今後、DCの財政問題が深刻化し、連邦政府からの資金投入が強められることになれば、投入された資金がDCの純粋な首都機能に対応したものなのか、それともDCの都市問題に対応したものなのかが問われる必要があろう。前者であれば、それはアメリカ国民全体にとっての公共財的な性質をもつので、連邦政府の資金が投入されるのは正当化されるが、後者の場合に、連邦政府の資金を投入する場合には、国民のコンセンサスを得る何らかの理由づけが求められることになろう。

<注>

1)州税についての詳細は、本庄(1986)を参照されたい。

2)本節の記述については、総合研究開発機構(1994)を参考にした。

3)東京市政調査会(1983)を参照されたい。

4)本節の記述については、東京市政調査会(1983)を参考にした。

5)1930年代の大不況下でのアメリカ資本主義の危機に対しては、州や地方政府に十分な対応力がなく、連邦政府主導の対策がとられた。これが起点となり、戦後の連邦政府主導の福祉

 

 

 

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