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 市町村に委ねられる権限は分権化の進展によって拡大しており、住民に身近な行政の担当者として、社会福祉分野では個々の請求に対する認定、教育の分野では幼稚園、小学校に関する事項などを管轄するほか、都市計画および土地占用計画の策定や建築許可の権限が移管されていることも注目される。市町村長は、これらの権限の一部を助役に委任することができる。
 市町村長は、市町村区域内における国の代表者としての機能もあわせ持ち、戸籍官吏及び司法警察官吏の職務を遂行している。国の官吏としての市町村長は、県知事の指揮監督に服し、市町村議会のコントロールを受けない。
 フランスでは、地方の公選職(市町村長、議員など)と国会議員や欧州議会議員との兼職が許容されている。1985年に兼職制限法が制定され、主要な公選職の兼職はいずれか2件までに制限されることになったが、対象となるのは、欧州議会議員、国会の上下両院議員、州議会議員、県議会議員、人口2万人以上の市町村の長及び人口10万人以上の市町村の助役に限られ、小規模町村の長には適用されない。フランスの選挙制度では、すでに2件の公選職を保有する候補者もそのまま第三の職に立候補することが可能であり、当選した時点でいずれかを放棄すればよいことになっているので、多くの政治家がより重要なポストの兼職を指向する。大都市の市長のほとんどは国会にも議席を保有しているのが現状で、下院議員の側から見た兼職率は、1973年の70%から1988年には96%に達している。
 市町村議会(conseil municipal)議員の選挙は、6年に一度行なわれる。議員定数は市町村の人口に応じて定められ、最低9名(人口100人以下)、最高69名(人口30万人以上。パリなどの大都市については別に規定されている)である。名簿式投票によって行われる選挙は、住民の意思を正確に議席に反映することよりも、安定した与党勢力を確保することに重点を置き、多数派に有利な制度となっている。

(2)県

 フランス本土(コルシカ島を含む)は96の県に分けられている。パリ周辺を除けば、県の面積はほぼ6000平方キロメートル程度で、大きな差はない。もともと県の区画は人為的なもので、大革命期に県内のどこからでも県都まで二昼夜のうちに馬車で往復できるようにと考えられたものであるという。県名は山や川の名称からとられたものが多く、県には県名のアルファベット順を原則として県番号が付けられ、こ

 

 

 

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