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第2章 フランスの首都における地方行財政制度

大山 礼子

1 地方制度の概要

フランスの地方制度は、現在でも19世紀初頭にナポレオン一世によって形づくられた骨格を受け継いでおり、比較的伝統的な色彩が濃いといえるだろう。基礎的自治体である市町村(Commune)はさらに古く、大革命以前から存在した自治市や教区に由来するが、大規模な境界変更は行われておらず、中世からの区画が残っているところも多い。また、県(departement)の区画は大革命後に人為的に線引きされたものであるが、こちらもその後の変化はほとんどない。県には国の官吏である知事(prefet)が配置され、第二次大戦後も、知事が県行政の長として行政運営にあたると同時に、市町村の監督を実施してきた。
 しかし、1982年以降、ミッテラン政権のもとで「分権化」(decentralisation)と名付けられた大幅な改革が実行された結果、地方制度は大きく様変わりした。分権化によって、官選知事制度は廃止され、これまで知事が市町村に対して行使していた後見監督と呼ばれる強力な事前統制権もなくなった。県の行政は、知事に代わって、県議会議員の互選により選出される県議会議長の手に委ねられた。知事の職そのものは残っているが、今後は県内における国の代表者という役割に限定され、出先機関の長としての職務を担当することになった。国の出先機関の役割は現在もなお重要であるとはいえ、組織の縮小は著しく、県レベルの出先機関の職員数は1992年から1994年にかけて1万5千人余から8千人ほどへとほぼ半減している。また、それまで一種の特別地方公共団体といってよい存在であった州(region)が完全な自治体に格上げされ、州にも公選による議会を設置することになった。国から地方自治体への大幅な権限委譲が行われると同時に、補助金の包括一元化が進められ、設備費一括補助金、分権化一括補助金が新設されるなど、地方財政の改革も進んだ。分権化は日本の戦後改革に相当する改革を実現しただけでなく、少なくとも部分的にはそれを越える内容を含むものだったといえる。
 現在の市町村、県および州からなる三層の地方制度の概要は、次のとおりである。

 

 

 

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