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きの社会的限界費用がゼロになるからで、無料の供給が可能になる。他方、排除性は民間企業が利益を追求する場合の基本的ルールであり、非排除的な場合にはそのサービスは政府が行わなければならない。そのような点から見て、介護サービスは利用者が増えれば1人当たりのケアの密度・水準を落とさざるを得ないから競合性も若干あり、またホームヘルプのように対人サービスであれば排除原則の適用も容易である。このため供給主体としては民間も可能であると考えられる。と同時に、介護サービスは非競合性もある程度有しているので、地域的な公共財と考えることもまた可能である。以下では介護サービスを地域的公共財として扱ってみたい。

(2) 地方分権化のメリット

地方分権という言葉には様々な意味があるが、ここでは地域ごとに分権的な意思決定を行うディセントライズド・システムを考える。分権的な制度をとった場合に資源配分についてどのような経済的効果があるか。主にそれは配分効率性と生産効率性の2つの側面において資源配分の効率性、すなわちパレート最適性という問題に影響してくると考えられる。まず、「分権化定理」の観点からは、配分効率性の問題がある。配分効率性とは公共財のアウトプットの水準に関する問題であり、最適な水準からどの程度過大ないしは過小になっているかという点を問題にしている。この定理は投入量すなわち供給費用が中央政府によっても地方政府によっても等しいと仮定し、さらに各地方政府が地域住民に最適な量を供給できると仮定するならば、中央政府が画一的にやるよりは地域に任せた方が必ず資源配分の効率性が高まるというものである。分権化することにより地域住民の選好に沿ったきめ細かな対応が可能となり、そのため配分効率性が高まるというのである。もう一つの分権化のメリットは、それによって地域間競争が起きるというものである。政府による供給は、X非効率性の問題や、裁量的予算最大化によって、予算が肥大化するという指摘がある。よって分権化して政策の決定権を各地域に移譲することにより、地域間の競争を誘発し、コストダウンを図る誘因が与えられる。また決定権を持つ機関が住民により近い

 

 

 

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