日本財団 図書館


2.課題

 

 本年度調査結果より熊本県の海上交通体系整備に関する課題を整理すると次のようになる。

 

(1)旅客航路に関する課題

 

1. 旅客航路需要の開拓
 県下の旅客航路は、そのほとんどが生活航路であり、その需要は発着港、寄港地周辺の市町村人口によって規定されてくる。そして、それらの市町村の人口のほとんどが減少傾向が続き、高齢化が目立っており、需要の停滞は旅客航路経営の最大の問題点である。
 ただ、需要のもう1つの柱である観光客はプラスの伸びを示しており、観光客を旅客航路利用客として有効に取り込む方策等、新しい需要の開拓が図られねばならない。

 

2. 旅客航路経営の改善
 旅客航路事業者アンケート調査によると、約80%の航路は採算割れであり、純旅客船航路の利用客数は滅少傾向が続いている。
 このように旅客航路経営はとくに企業規模が小さい事業所においてより深刻であり、経営維持が難しくなってきており、経営体質の改善が要請されている。

 

3. 架橋、道路整備による影響を考慮した計画策定
 「三県架橋」(九州西海岸広域基幹ルート構想)や「熊本天草幹線道路」の整備は、その完成まではかなりの年月が必要と考えられるが、この整備が完了すると旅客航路経営には大きなマイナスの影響を与えるものと考えられる。
 長期的には、これらの計画を視野に入れて熊本県の旅客航路体系整備を考える必要がある。

 

4. 旅客航路の集約化あるいは行政支援
 上述のとおり、旅客航路事業者は経営的にかなり厳しい状況に立たされており、更に近年は、海上タクシーの隻数が増加し、利用者はマイカーと海上タクシーを組み合わせて利用しているといった実状にある。
 このようなことから、御所浦に航路を就航させている事業者により共同化が行われ、経営の効率化が図られたが、それぞれの事業者の事情もあり、現段階では真の意味での一体化には至っていない。
 各事業者ごとの自助努カの限界を超えたケースもみられるので、集約化も含め、行政を中心とした支援策等も検討されることが必要である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION