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 しかしながら、貸渡業者(船主)は荷主と直接契約できないうえに運送業者からは不況の場合には用船料の引下げや用船契約の解除等の要請を受け採算が悪くなる。貸渡業者は運送業者との間でかなり長期の契約期間を取り決めているものの、用船料については毎年更新しているため、運送業者に比べ輸送量の減少や景気の悪化の影響を受け易い傾向にある。

 九州の海運業者の経営上の問題点は、実態調査からみると、次のとおりである。

 ? 運送業の場合、重要な問題点をみると、「船員の高齢化」が最も多く、次いで、「適正運賃が収受できない」、「荷主の運賃値下げ要求が厳しい」となっており、これらの問題点にっいてはそれぞれ30%前後の業者が重要視している。
 船員の高齢化は運送業者にとってかなり重要な経営問題となっており、また、経済環境の悪化によって荷主から適正な運賃が収受できないばかりでなく、荷主の運賃値下げ要求が厳しいといった問題をもっている。それに加え貨物輸送量の減少に伴う運賃収入の減少も経営自体の悪化を招いている。

 ? 貸渡業の問題点として「用船料の低下」を60%近くの業者があげており、次いで「船員の高齢化」、「建造船価の高騰」、「借入の元金、利払いの重圧」、「用船契約条件の低下」等をそれぞれ30%前後の業者があげている。用船料及び用船契約条件の低下は収入の減少となり、船員の賃金、借入の返済の重圧は船舶コストを押し上げる要因となっているため、収入の減少とともに船舶コストの増加が問題点として指摘される。

  (2)経営上の課題

 内航海運業の活性化の観点から前項の問題点を踏まえ、経営上の課題について整理を行うと次のとおりである。

 ? 運送業者で「不況対策を実施している」のは20%にも満たないが、具体的な対策としては、多くが「省力化による運航コストの削減」を行っている。しかし、実際には、「船員の高齢化」によるコストアップや「船舶の稼働率」が低下している状況下では、実効性は極めて厳しいと思われる。そのため、運送業者は荷主に対する運賃値上げ交渉と船主・貸渡業者に対する用船料の引下げをどのように行うかが、重要課題となっている。

 ? 貸渡業者で「不況対策を実施している」のは10%にも満たないが、具体的な対策を行っている中で最も多いのが「運航コストの削減」(11件)であり、「近代化船への代替の促進」、「専用船の開発、代替の促進」(各4件)である。しかしながら、先にみた経営上の問題点で明らかなように、運航コストの削減については船員賃金の上昇や船舶の稼働率の低下等に加え近代化船や専用船の代替・開発についても建造船価の高騰、借入に伴う元金・利払いの重

 

 

 

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