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(参考)スウェーデンにおける施策等を紹介しておく。
(平成4年度版国民生活白書)

 

(人口の長期動向)
スウェーデンの人口は1870年には約417万人であった。貧しい農業国であったスウェーデンではその後経済危機と食料不足により、19世紀後半から今世紀初頭にかけて約100万人が移民としてアメリカに渡った(第I−5−29図)。19世紀末から急速な工業化が進展し人口は500万人を超えた。他方、合計特殊出生率の動向をみると1928年に2.07と人口を維持できる水準を下回り、大恐慌と大量失業の後、さらに大きく低下し、1935年には人口問題審議会がつくられるなど、人口政策が論議されるようになった。1930年代半ばには1.70まで低下した後回復に向かい、1944年および1960年代にはベビーブームが到来する。しかしながら、その後再び出生率は低下し始め、1978年には1.60まで低下した。このため、1970年代には、再び家族政策が議論されている。
(家族政策の考え方)
スウェーデンの発達した家族政策の基礎には、1930年代以来の人口・家族政策についての論議の積み重ねがあるが、これらは個人の選択を極めて重視した議論であった。1970年代以降の家族政策も、家族が自分の選んだライフスタイルを実現できることを目標とするものであり、出生率に直接政府が介入するような政策は取っていない。家族政策は、経済的に負担が最も重いのは子供を扶養している家庭であるという考え方から、子供を持つ家庭と持たない家庭の負担を等しくするための社会政策の一部分として位置づけられている。
(育児休暇制度)
スウェーデンの育児休暇制度には2つの法律が関連している。労働法の一種であり休暇の要件・効果を定める「育児休暇法」と、社会保険法の一種であり休暇期間中の所得保障について規定する「両親保険法」である。
育児休暇制度には、?@全日休日型と?A労働時間短縮型がある全日休日型の育児休暇は子供が1歳半まで有効であり、労働時間短縮型は子供が8歳までの間、1日の労働時間を半分または4分の3とするものである。対象は、休暇開始前に一定期間雇用されていたすべての働く親であり、父母とも取得できるが同時に取得することはできない。育児休暇は勤務日として扱われ有給日数は影響を受けず、保険料の負担もない。また、取得後、同程度の職業に復帰できることも保障されている。
休暇期間中の所得保障については、父母合わせて450日間であり、そのうち360日間については勤労所得の90%、残る90日間については一定額(1990年には60クローネ、1クローネ=約25.4円)が支給される。2人目以降の子供については1人につき180日分ずつ追加される。
(家族手当の充実)
スウェーデンの家族政策の中心となるのは、育児休暇期間中の所得保障にもみられたように、子供を育てる家庭への経済的支援である。16歳未満の児童を養育しているすべての家庭に支給される「児童手当」は、1991年には子供1人

 

 

 

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