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3 少子化の影響等

まず、少子化が社会にもたらす影響について考えてみよう。

 

(「平成8年版厚生白書」)
・ 人口の減少と高齢化の進展
まず、出生率が低いまま推移すれば、やがて我が国の総人口の減少をもたらし、「人口減少型社会」の到来を早めることになる。1994(平成6)年の合計特殊出生率(1.50)、出生性比(女100に対し男105.6の割合の出生数)および平均寿命(男76.57年、女82.98年)が変わらないという前提で試算すると、我が国の総人口は、外国人の流入を考慮に入れなければ、2010年をピークに減少に転じ、50年後の2040年頃には現在の8割の1億400万人に、90年後の2080年頃にはほぼ半数の6,800万人にまで減少するものと推計される。
(略)
人口の減少はまた、人口密度を低下させ、国民1人当たりの国土面積を拡大する。これによって国民1人当たり面積が拡大し、ゆとりある空間を確保することが容易になる可能性がある。しかし、人口の減少は、同時に、より一層の過疎化をもたらすおそれがあり、国土の均衡ある発展がより強く求められることにもなる。
・A経済への影響
出生率の低下が続くことになると、高齢者人口が増加する一方で国全体の生産力を支える生産年齢人口が減少し、経済の分野においては、国全体の経済力をいかに確保していくかが大きな問題となる。
特に、若年労働力の相対的減少は、新しい技術への潜在的対応力を弱めるなど生産性の向上を図る上でも困難をもたらす可能性がある。
・B社会保障制度への影響
人口減少型社会にあっては、社会保障制度も大きな影響を受ける。年金制度や老人保健制度は世代間扶養の仕組みであり、これに要する費用を支える現役世代が相対的に減少するため、社会保障に係る現役世代の負担は相対的に増大せざるを得ないことになり、いかにして社会保障に係る負担を支えていくかが課題となるまた、保健、医療、福祉の人材をいかに確保するかも、長期的には大きな問題となる。
以上出生率の低下が及ぼす主な影響を列挙してみたが、具体的にどのような影響が生じるかについては、より掘り下げた検討が必要となる。しかし、出生率の急速な低下が、我が国の社会、経済に少なからぬ影響を及ぼすであろうことは間違いない。
(略)

 

少子化対策としては様々な施策が考えられる。その中で育児支援がどのような効果を持ちうるのか、についての厚生白書の記述を見てみよう。

 

(「平成8年版厚生白書」)
・ 出生率は低下する反面、子どもをもつ必要があると考える人の割合は高い。
我が国では、結婚しない男女の増加による未婚率の上昇が近年の出生率低下の要因となっている。
結婚に関する意識は変わりつつあり、必ずしも結婚にこだわらない人々が増えており、独身にとどまっている理由として自由や気楽さを失いたくないとする理由をあげる者が少なくないことは、第1章でみたとおりである。しかし同時に、結婚した夫婦は3人近くの子どもを理想とし、また、既婚・未婚を問わず、子どもを持つ必要があると考える人の割合は、欧米諸国に比べ高い。
・A保育サービスの充実は、女性の就業を促進する。
都道府県別の保育所利用率(当該都道府県の学齢前児童数に占める保育所入所児童数の割合)と6歳未満の子どものいる女性の有業率との関係を調べてみると、両者の間には正の相関関係がみられる。

 

 

 

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