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?T ボランティア活動の現状とボランティア団体等に対する行政の関わり方

 

1 ボランティア活動の現状

(1) ボランティア活動の定義

「ボランティア活動とは何か」について、平成5年版国民生活白書では次のように記されている。
(平成5年版国民生活白書)
一般的に、ボランティア活動は、報酬を目的とせず、自発的な意思に基づいて自分の労力等を他人や社会のために提供することといった意味でとらえられることが多い。しかし、その活動の中身は多様であり、生産や販売のようだ経済活動でもないため、世の中でその存在は多くの人が認識しているにもかかわらず、これまであまり明確な定義付けは行われてこなかった。日本だけでなく、ボランティア活動が盛んであるといわれている欧米諸国でも厳密で統一的な定義というものはない。
このようにボランティア活動の定義が決められていないのは、ボランティアの研究が始まってから日が浅いことにもよるが、統一的な定義のもとに、ある行為をボランティアであるかないかと決めることの意義がどれほどあるかということも大きいのではないかと考えられる。
日本においても「ボランティア」という言葉について適当な訳語や明確な定義付けがたいままに、おもに福祉の分野で「奉仕活動」という言葉と強く結び付いたために、「身を犠牲にして尽くす」あるいは「崇高な献身活動」等ととらえられるなど、一般には入りにくい特別な世界と考えられることも多い。
ボランティア活動について、あえて、その要素を抽出すると第I−5−6図のようになろう。しかし、定義については前述のように、何をボランティア活動とするかを先に決めることよりも、むしろ、他人や社会に対して自分が何をしたいか、どうかかわりたいかという個々人の主体的な意志が出発点となり、その活動内容や方法は第I−5−7表に例示したようにかなりの広がりを持つものであると考えるのが妥当ではなかろうか。
ボランティア活動には、専門的な技術や資格、経験が必要な場合もある。しかし、老人や病人の介護を例に取ってみても、看護等の経験、資格がない人でも、おもに介護をする人の補助として身の回りの世話や、話し相手、おむつたたみ等の活動をするなどというように、自分の力に応じて誰もが比較的簡単に活動にかかわることができるものも多く、活動する人自身の趣味の延長であったり、気軽に楽しみながらできる活動もたくさんある。
また、特別に施設等へ出向かなくても、住んでいる地域や街など我々の身近にボランティア活動の機会はたくさん存在し、募金やボランティア貯金に協力することなど、特別な労力や時間を費やさなくても活動にかかわることができる。さらに、我々の日常生活での無意識の何気ない他人を思いやる行為がボランティア活動である場合も多いものと考えられる。
さらに、日本ではボランティア活動の範囲を狭く考えがちなこともあって、これまでそれと意識されてこなかった活動の中にも、日本的な相互扶助の土壌を見いだすことができる。すなわち、かつては結(ゆい)や講(こう)等の相互扶助的組織が存在した地域が多かった。また、現在においても「人情」といった言葉で代表されるような近隣社会での日常的な助け合いが残っている地域も少なからずある。こうしたものは名称、分類を議論することとは別に、顔の見える範囲での市民の相互扶助の伝統として維持されていくことが望ましいのではないだろうか。
一方、福祉制度等については政府が準公共財として整備すべきものであるとの考え方が強く出されることにより、市民間での相互扶助よりも公的な制度・サービスの充実が優先された面もある。しかし、基本的な制度や施設、サービスについては政府の手で整備することが適切であっても、福祉等の分野は一方では市民の日常生活と深く交差しており、その部分で市民の自主的な参加による助け合いが重要な役割をはたす分野である。
今後、人口の高齢化等によって、こうした分野での必要性は一層拡大していくと考えられるが、一方で家族規模の縮小、近隣社会での人間関係の疎遠化等が進行するとすれば、地域社会全体で市民の連帯感を盛り上げ、ボランティア活動等によって、市民自らが社会を支えていくことの必要性がより高まることになろう。

 

 

 

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