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(3)自然環境と地域づくり
地域で自然環境の保全と、関連した地域づくりの取組みが行われている。
その取組みについて見てみよう。
(「平成7年版環境白書」)
国内の取組
?@地域の身近な自然環境の保全に向けた取組
我が国においては、昭和50年代半ばころから、「ホタルの里復活運動」など、身近な昆虫類を復活させようとする市民運動が各地に起こり、それと呼応して里山保全運動や水辺の自然環境の保全運動が進められるようになった。現在では各地でこのような身近な自然環境を保全する運動が展開されるようになってきている。例えば、最近では、東京都と埼玉県の境にある狭山丘陵の自然をまもるために「トトロのふるさと基金」運動が展開されている。保全の方法としては、広く一般の人に募金を呼びかけ、市民の手で土地を買い上げ、保全・管理していくというナショナルトラスト方式をとっており、「トトロ」という皆に親しまれている映画のキャラクターを運動のシンボルに据えたことにより、小中高生を含む多くの人々から寄付が寄せられた。その結果、運動開始1年4か月後の平成3年8月には雑木林の一部(第1号地)の取得に成功し、現在2号地の取得に向けて活動を続けている。運動では、狭山丘陵の自然観察会や雑木林の清掃等の企画を随時行うことにより、土地取得後の維持管理も含めて一般市民の積極的な参加の中で保全がなされていくことが重視されている。地元自治体の所沢市及び埼玉県では、このような市民の取組を受け、1号地の周辺の買い取りを決定するとともに、環境庁・埼玉県では「ふるさといきものふれあいの里」の整備を行うなど狭山丘陵の保全を進めている。市民主導の保全運動のみでは、資金的な制約等から、どうしても保全地域が狭い範囲にとどまらざるを得ない場合が多いが、このケースでは、地方自治体等による支援と連携により、地域全体の自然を総合的に保全していくことが可能となった。
一方、環境庁が緑地管理の課題について地方自治体に対し行ったアンケートによると、第1に「管理費の増強」が、そして第2に「市民の積極的参加」が多くの地方自治体にとっての緑地管理上の課題となっている(第3−2−7図)。
これを同時に行った自由記述の回答と合わせてみると、緑地管理費の不足を市民ボランティアの積極的参加によって打開したいと考えている自治体が多いことがわかる。

第3−2−7図 地方自治体における緑地管理の課題

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そのような中で、横浜市の「横浜自然観察の森」等では、多くの市民ボランティアの参加の下で、その保全・管理がなされている。同自然観察の森の運営は、財団法人に委託されており、その下で広く市民の参加を募って「雑木林ファンクラブ」という環境管理型の活動が実施されている。活動内容としては、育林や下草刈り、落ち葉かきなどの雑木林の維持・管理作業、草木染めや炭焼きなどを通じた雑木林の利用、さらに林床植物調査などが複合的に組み合わされており、維持管理を含めて楽しみながら雑木林の現代的な活用が図られている。また、このような行事への参加者の中から有志が集まって自主的に雑木林の管理作業を行うグループが生まれている。このような例は他の自治体においても参考になると考えられ、情報交換等により経験の共有を図っていくことが重要であろう。
?A都市と農村の交流
有機農産物の産地直送等を通じて築かれる、都市と農村の「お互いに顔の見える」関係が発展して、お互いの地域の環境保全に結びつく事例も見られる。
例えば、山形県遊佐町農協(現庄内緑農協)と首都圏で活動を展開する生活クラブ生協は、20年来、安全でおいしい米の共同購入を通じて交流を続けてきている。遊佐町では、生活クラブ生協との交流によって、合成洗剤使用を控えてせっけんを使う運動が定着するなど、環境保全意識が交流を通じて形成されてきた。このような中で、同町では、生協からの支援を受け、町民の生活用水と農業用水に用いられている河111の上流で操業を開始した工場の買収・移転を行ったことをきっかけに、清流を守る基本条例が制定された。また、生協では町の「恒常的な環境保全と監視」のための基金設立を組合員に呼びかけ、カンパにより集められた資金を基に町の環境保全基金が設立されている。この

 

 

 

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