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2 国の施策の動向についてみてみよう。
(1)ゴールドブラン前夜−地域化、一般化、総合化に向けての歩み−
(平成7年版厚生白書)
要介護高齢者に対する在宅福祉施策は、老人福祉法制定(昭和38年)以前から「老人家庭奉仕員派遣事業」として行われていたが、その対象者は、当初「要保護老人世帯」、その後昭和40年に「低所得の家庭」にまで広げられたにすぎなかった。
その後,ねたきり老人特殊寝台貸与事業、ねたきり老人のために居室などの増改築のための世帯更正資金貸付事業、老人電話相談センターの設置、在宅老人機能回復訓練事業などが新たに実施された。しかし、昭和40年代までは、大筋において施設と在宅とはしゅん別されていた。
昭和50年代に入って、老人ホームを「地域」の在宅老人福祉施策の推進に活用する事業が実現し始めた。すなわち、53年度の「寝たきり老人短期保護事業」であり、54年度の「デイサービス事業」であり、56年度の「訪問サービス事業」である。
ここにおいて、従来の「施設」か「在宅」かという二者択一的な考え方が改められ、「施設」サービスは「地域」の貴重な資源の一つであって、在宅生活継続を望む住民のために柔軟に活用されるべきものであるとの方向性が明らかにされることになった。
また、昭和57年10月から、従来、所得税非課税世帯のみを対象としていた家庭奉仕員派遣事業について、所得要件を撤廃し、派遣を要する世帯すべてに対象を拡大するとともに、負担能力に応じた費用負担制度を導入した。これは在宅福祉サービスの一般化の端緒となる。
昭和60年代に入ると、高齢化社会の進ちょくに伴い、市町村における在宅サービスの充実や保健、福祉、医療との連携が強化されることとなる。すなわち、昭和61年度においては、老人福祉法の改正により、デイサービスとショートステイが市町村事業として法律上明確に位置づけられ、地方公共団体に対する国庫補助率も3分の1から2分の1へ引き上げられた。また、老人保健法の改正により老人保健施設の創設(昭和61年度)が行われるとともに、老人保健事業においても、62年度より、在宅要介護高齢者等に対する訪問指導、機能訓練が拡充された。さらに、保健・福祉・医療の連携を図るために、保健所に「保健所保健福祉サービス調整推進会議」が、市町村に「高齢者サービス調整チーム」が設置され(昭和62年度)、63年度から「訪問看護等在宅ケア総合推進モデル事業」が実施された。
(2)ゴールドプランの策定(平成元年12月)
(平成7年版厚生白書)
平成に入ると、高齢者保健福祉の地域化、一般化、総合化の流れは加速することとなる。その意味でゴールドプランの策定(平成元年12月)は、高齢者保健福祉施策の推進にとって時代を画する契機となるものであった。ゴールドプランは、高齢者の保健福祉の分野における公共サービスの基盤整備を進めるために、在宅福祉、施設福祉などの事業について今世紀中に実現を図るべき10か年の目標を掲げ、これらの事業の大幅な拡充を図ることとするものである。
これは、事業実施を直接的に担当する厚生大臣だけでなく、地方行財政を担当する自治大臣および国家財政を担当する大蔵大臣が合意したものであること、在宅福祉サービス、施設福祉サービスなどの整備に当たって、10か年にわたる長期的な目標値を定め、国民にわかりやすいかたちで推進することとしていることなどから、従来にない画期的なものであった。
ゴールドプランは大きく、?@在宅福祉の緊急整備、?A施設の緊急整備、?B「寝たきり老人ゼロ作戦」の推進、?C民間の創意工夫を生かした在宅福祉事業などを図るための長寿社会福祉基金の設置、?D高齢者の生きがい対策、?E長寿科学研究の推進、?F高齢者のための総合的なまちづくりからなる。さらに、これを支援する事業として、保健医療・福祉の人材確保、地方公共団体の自主的な取組を支援する高齢者保健福祉推進特別事業、在宅福祉についての先進モデル事業への助成および介護実習・普及センターの設置が行われている。

 

 

 

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