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?.計画立案と進行の経緯

中国衛生部の寄生虫感染状況の調査(1992年)によると、全国30省に64種の寄生虫が分布し、全人口の約63%(8億人強)の国民に何らかの寄生虫が感染しているという。なかでも土壌媒介性の回虫、鈎虫、鞭虫の感染者はそれぞれ少なくとも5億2千万人、1億8千万人、2億1千万人に達する。従来から特に重視されてきた日本住血吸虫症、マラリア、フィラリア症等の対策は相当進んでいるとは言え完全制圧には至らず、上記の土壌媒介性寄生線虫にも注意を払わなければならず、さらに、都市部ではニューモシスチス・カリニのように日和見感染の病原体として重視され始めたものもある。したがって、中国の寄生虫症は以前に劣らず現在もきわめて重要である。以上のような寄生虫症の特徴はこの国の住民の社会経済的な発展段階と深く関連していると考えられる。
1984年6月、笹川記念保健協力財団の石館守三理事長(当時)と中国予防医学中心(現在の中国予防医学科学院)の陳春明(Chen ChunMing)長官の間で、日中両国間の寄生虫学者の交換訪問計画について合意が成立した。その計画の内容は次のとおりである。
(1)両国の主任はそれぞれ毛守白教授(中国予防医学科学院寄生虫病研究所長)と安羅岡一男教授(筑波大学基礎医学系)とする。
(2)両国の寄生虫学者を毎年2名ずつ交換訪問させる。
(3)滞在期間は1ヵ月間とする。
(4)人選は両国の主任が協議の上決定する。
(5)双方の旅費、滞在費は財団が助成する。
(6)第1期3年計画は1984年4月に遡って開始する。
本計画が発足して間もなく、中国側主任は毛守白所長から金森海所長に変更され、さらに1994年度から現在の馮正所長に変更された。また、1990年度から日本へ招聘する中国の寄生虫学者を3名に、そして1993年度から中国へ派遣する日本の学者を3名に増員した。過去11年間に中国から日本へ27名の学者が招聘され、日本から中国へ25名が派遣されている。

 

 

 

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