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Hの決定法については充分な根拠がないので、今後追加実験結果及び実験結果の再検討を行う予定である。
このモデルを用いて計算した結果を図10、図11に示す。図10は遊水部の平均水位上昇量、図11は導水流遠の計算値と実験値の比較である。図10、11から、天端高が潮位より高い場合(Δ)で平均水位上昇量、導水量ともに大きいデータ(入射波高が大きい)を除いて、計算値と実験値の一致度は良い。潮位が天端高より低い場合で波高が高いと、目視観測から遊水部で水位の振動が増幅しており、大きな戻リ流れが生じているのが確認された。この現象を本モデルでは再現できないためにこのような差が現れたと思われる。しかしながら、海水交流機能のための設計外力となる波浪諸元は、構造安定計算の際に使用する激浪ではなく、通常波浪時のものである。通常波浪時は概ね現地スケールで0〜2mであると考えられ、この範囲であれば実験値と計算値の一致度は極めて良く、工学的にはそれほどの問題はないと考えられる。

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図10. 水位上昇量の計算値と実験値の比較

Fig10. Comparison between measured Wave-setup and Calculaled One

図11. 導水流速の計算値と実験値の比較

Fig11. Comparison between measured inflow velocily and calculated one

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4. 結語
以上、実験及び導水量算定モデルについて述べた。本海水交流工の性能は、例えば波高1m程度で防波堤単位幅当たり3〜5m3/sec(259200〜432000m3/day)となり、極めて性能の高い施設といえ、著者らも実用化に向けて努力していきたい。しかしながら、本施設の安定性や構造設計にかかわる諸問題が多く残されている。また、本施設が殆ど水面下の構造となっているため施工性の問題もある。今後、これらの問題について検討していくと同時に先に述べた水理学的な問題について検討していきたい。
尚、本研究のうち実験結果の解析と導水量の算定モデルの検討は、科学技術庁の国内留学制度により東北大学工学部付災害制度研究センター首藤伸夫教授の指導の元に行われた。国内留学期問中、同研究センター津波研究室、同大工学部土木工学科河川水理、海岸水理両研究室の方々に議論に加わって頂き、多くの助言・指導を受け。水理模型実験は漁港漁村整備費のうち漁港漁村調査費により行われ、実験においては水産工学研究所漁港水環研究室のスタッフの多大な協力を得た。関係各位に深く感謝の意を表す。
参考文献
1)吉川秀夫・椎貝博美・河野二夫:海岸堤防の越波に関する基礎的研究(1)、第14回海岸工学講演会講演集、pp.118〜122.1967
2)本間仁:低溢流堰堤の流量係数、土木学会誌、第26巻.6号、
pp.635〜645、および9号、pp.849〜862、1940
3)山本正昭、中泉正光、間辺本分:潜堤付き防波堤による海水交流工の開発、第34回海岸工学講演会講演集、pp.675〜679、1987
4)森口朗彦、山本正昭、神山教:海水導入を目的とした替堤付防波堤の開発(111)−実用化に向けての検討−、水産工学研究所技術報告、水産土木第13号、pp.55〜64、1991
5)山本正昭:潜堤付き海水導入工の計画と設計、水産工学研究所技術報告、水産土木第16号、pp.1〜12、1994

 

 

 

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