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大阪湾の環境創造における船舶の役割

−海からの視点による沿岸域環境整備−
Role of Ship and Harbour for Creating Desirable Environment in Osaka Bay Area
-Environmental development of coastal area from the viewpoint of the sea-
田中一朗*、姫野洋司†、内藤林‡、井上欣三§、池田良穂†、大塚耕司†、細田龍介†*:大阪大学名誉教授、†:大阪府立大学、‡:大阪大学、§:神戸商船大学

Abstract

Ships and crafts had played important roles in rescuing, relieving, supporting people's daily life and rehabilitation activities after the disastrous earthquake broke out in Awajishima island, Kobe and Hanshin area.
However, due to the fact that many people including administration officials have not recognized there is an open sea area (Osaka Bay) in front of them for evacuating families and people suffered from the disaster, loss of human life, damages of personal possessions and property as well as the damages on the social and economic activities may be considered to become big.
The authors have studied the damages, activities of rescuing, supporting life-lines and rehabilitation, etc. of the Hanshin-Awaji disastrous earthquake from the viewpoint of the sea and have obtained an instructive results. They show the results of study and propose a development model of coastal cities that will play an important role for the social and economic environment in the 21st century.
Key words: Osaka Bay Area, ship & harbour, rescue and support, rehabilitation, environmental creation, coastal area

1. 緒言

1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災は、一瞬のうちに多くの人命を奪い、人間生活、社会・経済活動の場を破壊し尽くした。明治以降一世紀に亘り神戸・阪神地区に営々として築き上げてきた近代都市空間も自然の前には脆弱なものでしかなく、大きく発展を遂げた科学技術文明も自然の破壊力には耐えることが難しいことが明らかとなった。
しかし、地球上の各地で大地震が頻発している昨今、なぜ阪神・淡路大震災の場合に大被害を被る結果となったかを正しく把握し、将来に備える必要がある。背後に六甲山系が迫っているという地理的条件に加えて、この地域に居をなし、また活動の拠点としてきた人間が生活、社会・経済活動の高効率化を追求するあまり、人口と、経済、産業、交通・輸送、更には文化的施設をも含めて全ての機能を一個所に集中させたこと、陸上に棲む人間が全面に大きく広がる大阪湾という海の存在を忘れてしまっていたことが被害を大きくしたことは誰もが認めるところである。
では、震災時に海や港湾、船の活用が全くなされなかったかというと必ずしもそうではなく、救難、救援、生活支援に大きな力を発揮したことも紛れもない事実である。また、震災後の復旧・復興街づくり、都市計画においても、港湾、水路、河川を市民の生活空間として提供し、防災にも役立てようという提案がなされつつある。
本論文では、阪神・淡路大震災の教訓を生かし、船舶が災害発生時の救援活動に大きな力を持ち得ること、その場合の港湾や船の位置づけ、平常時の船の活用、海域空間活用を前提とした街づくり、都市計画、さらには、海路を陸域との結節点をも含めて「海の国土軸」として位置づける等の「海からの視点」を基本とした構想の検討、提案を行う。

2. 阪神・淡路大震災の教訓

2.1 船舶による救援活動の概要
既に述べたように、地震発生の当日から船舶(小型舟艇を含む)による救援活動はかなり大きく展開されたこ

 

 

 

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