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 第1章 はじめに

 1-1 調査の目的と背景

 ミャンマーでは1988年以降、軍事政権と国民民主連盟(NLD)との対立が続いている。この期間、人権問題・民主化問題の為、先進各国を中心に同国に対する経済制裁が続いており現在のミャンマーの経済は厳しい環境におかれている。この厳しい国家財政に起因し、同国の社会基盤施設の老朽化・損傷は激しく、今後の修復、整備の必要性が増加している。
 ミャンマーの首都であるヤンゴン市は現在約400万人の人口を擁しており年間約2%の増加を続けている。ヤンゴン市域は東・西・南の三方を河川で囲まれており人口の増加に伴う市街化は主要幹線道路沿いに市北部に線状的に広がっている。ヤンゴン市ではこの線状的な市街化及び中心部の密集住宅地域の整備の一環として、市東部及び西部に4箇所のサテライト・タウンの建設を進めている。
 現在、ヤンゴン市では1日に約560万人の人々が移動していると推定されている。その内約310万人が徒歩(55%)、230万人が公共輸送機関(41%)、20万人が自家用車(4%)を利用している。
 公共輸送機関の内、約80%がバス利用であり、他は鉄道、フェリー、タクシー等を利用している。
 その内訳はヤンゴンバス管理員会(YDBCC:Yangon Division Bus Control Committee)管理下の民間バスが78%、運輸省管轄の陸運公社(RT:Road Transport)が16%、残り3%がミャンマー国鉄、3%がその他となっている。YDBCC加入の民間バスのオーナーは平均2台程度(最大14台)で、使用する車輌はPick Up等の小型車が多く、また、現段階では民間企業として成長していないのが現状である。YDBCC加入のオーナーは零細業者であり、単独の運営主体としては陸運公社が最大である。
 現在、陸運公社は市内に29路線のバス運行を、25人乗り、33人乗り、42人乗りなどのバスで行っている。しかし、保有する922台の殆どのバスは老朽化が激しく、これらのバスの内、現在運行しているのは423台にすぎない。また運行状態は常に過密である。バスのメンテナンスを行なうワークショップも非常に老朽化しており、修理部品の欠乏や修理に必要な機材も殆ど整備されていないのが実情である。
 経済開放政策の実施に伴い、近年の首都ヤンゴン市のモーターリゼイションは著しいものがあり、ダウンタウン、市内幹線道路の朝・昼・夕の通勤・通学ラッシュによる交通渋滞は日常的になりつつある。政府も交通渋滞の緩和、運送効率・燃料消費効率の向上、環境保全、安全性の譜面から新規大型バスの増強等による公共輸送力の増強の必要性を強く認識している。しかし、厳しい財政下、陸運公社に対し市場二一ズ対応した新規大型バスの増強や整備施設の拡充整備を行なう事は難しく、運輸セクターにおける大きな問題となっている。
 なお、本調査はヤンゴン市における公共輸送(バス輸送)の現況、問題点を把握すると共に、今後の基本的な整備案の策定を目的として実施された。

 

 1-2 調査団の構成

 団長  佐市 恒雄  (梓 設計 副参与)  施設計画担当

 団員  本間 政仁  (日本工営 参事)   運行計画担当

 

 1-3 調査日程

     調査日程は「表−1 調査日程」に示した通りである。

 

 

 

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