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 第2節 対応の考え方

 阪神・淡路大震災から導き出された表-7の課題については、次のように考えることができよう。
 今回調査対象とした地方公共団体がとっていた地震対応が必ずしも有効ではない、もしくは十分ではない場合がありうることが阪神・淡路大震災によって示された課題については、早急に対応を考慮する必要があろう。また、対応が有効だったものについては、引き続きその施行を検討ないしは実行することが望ましい。
 課題に対する対応の在り方は、地方公共団体の情報システム部門の規模や財政事情によってさまざまであろう。したがって、本研究では、課題への対策を講ずるための考え方を示すこととして、次の諸点を挙げる。なお、カッコ内の番号は表-7のNo.を示す。

 ・コンピュータシステムの周辺設備の耐震性強化(1,3,4,5,8,10,16)

 ・外部との連絡手段の多重化(9,19)

 ・震災時の行動規準の作成(2,11,13)

 ・コンピュータシステムの設置手段の耐震性強化(6,7,14,17,18)

 ・バックアップデータ保管の多重化(15)

 ・代替機材の確保(12)

 以下、各点について具体的に述べる。

2−1 コンピュータシステムの周辺設備の耐震性強化

 阪神・淡路大震災における地方公共団体のコンピュータ関連被害の中で際立っていたのが「水冷式空調設備における屋上クーリングタワーなどの倒壊による作動不能」と「固定していないフリーアクセス床の脱落による機器傾斜・転倒」である。
 発生時期が偶然冬であったことが幸いして、大事には至らなかったが、コンピュータシステムの耐震性向上の盲点として、十分に認識しておく必要があろう。
 この他、建物の歪みなどにより、コンピュータ室への出入り口が使用できなくなり、初期段階での人の出入りや、復旧活動時の機器の搬出入に支障を来たすケースがあった。建物の構造との関係もあるが、機器の搬出入までも考慮した十分な大きさの出入口を多重化して確保しておくことも検討しておく必要があろう。

2−2 外部との連絡手段の多重化

 阪神・淡路大震災においては、初期段階での地方公共団体側からメーカー及び関連業者への連絡は電話回線の途絶のために不可能だったケースが多く、むしろメーカー側から個別に、又はチームを組んで、各個にもしくは巡回で状況確認を行っていったケースが多い。
 メーカー側の保守センターによる遠隔監視サービスを導入していた団体については、メーカー側で異常事態の発生を感知していた。ただ、地方公共団体については、行政機関以外にホストコンピュータヘのアクセス手段を与えることを問題視する考え方もあり、積極的に普及を図ることが難しい側面がある。
 また、コンピュータ以外の設備や機材に関しては、地方公共団体側からの連絡に応じて(要員不足などの理由によって、対応は遅くなった場合もあったが)関連業者が手配を行な

 

 

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