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1・研究概要

1.1研究背景

航空需要は経済の発展に伴って増加の一途を辿っており、特に東南アジアにおいては今後大きな伸びが予想されている。
一方、既にシベリア・ルート、太平洋東南アジア等では出発到着の遅延が恒常化し、利用者にとっても航空会社にとっても大きな負担損出となっている。第二次世界対戦終了時にはすでに実現化されていたHF通信、レーダーによる監視、在来航法機器その後まもなく登場したIRSなど航空界が現在使用しているシステムは、戦後約50年を経た現在、時代に対応できなくなりつつある。
すなわち、世界的規模で現状を改善し、次世代の需要に応じるためには現在の通信・航法・監視のツールでは能力と効率の面で明らかに無理がある。
ICAO(国際反問航空機関)では、上述のような課題を世界的規模で解決するため、人工衛星やデータ通信の新技術を利用した新しい航空交通管理のあり方について、14年前の1983年から検討が進められ、1991年の第10回航空会議(ANC1)において、正式にFANS2構想として承認された。
このFANS構想は、衛星を利用して航空機の位置を継続的にしらせる自動従属監視やデータ通信で行なわれる管制通信等、より具体的な機能として整理され、近年においては、CNS/ATM3と呼ばれている。
南太平洋の空域では、1995年から、既にそのシステムの導入を図り、運用が開始されており、わが国においても北太平洋空域に於ける導入の早期実現を目指して、関係当局並びに諸外国の関係機関と調整を図りながら、現在、システムを構築中である。
一方、航空機メーカーにおいても、B747−400を初めとして、B777,MD1
1等、その開発に勢力を注ぎ、CNS/ATMシステムに対応しようとしている。
このように、FANS構想は、地上と機上のシステムが一体となった新しい航空交通管理の総合システムとして、世界的規模で整備されようとしている。
CNS/ATMシステムは、世界中のいかなる地域にあっても一定水準以上の航空保安サービスを提供することが求められている。そのためには、現在、開発されているB747−400のFANS1機器ならびにインマルサット衛星等を利用した通信網等、これらの機能・性能等を十分に検討・評価し、将来導入されるわが国の本格システムの参考とすることが必要と考えられ、これを調査するものである。
1 ANC:Air Navigation Committee
2 FANS:Future Air Navigation System
3 CNS/ATM:Communication Navigation Surveillance Air Traffic Management

 

 

 

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