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あとがき

 

今年の1月2日、島根県隠岐の北北東海上においてロシア船籍「ナホトカ」号遭難し、約6,200kl以上ものC重油が流出した。本委員会で開発され、公開後まだ2ヵ月にも満たない新型高粘度油用油処理剤D−1128が使用され、流出直後はもちろん、風化初期段階のC重油に極めて有効であることが実証された。しかし、さらに風化して油塊化した流出油には、現時点で世界最高の乳化分散能を有するこの新型処理剤とて、効果を発揮できなかった。80%近くも水分を含み、粘度をさらに増した油塊に対しては、油処理剤(正しくは乳化分散剤)は無力なのか、その性能のさらなる向上を目指すとともに、限界を極めることが望まれよう。流出油の処理は流出直後、すなわち油膜が広がらず、油が風化しないうちに行うのが最も効果的といわれているが、それならば、船舶よりも数等足の速い航空機からの散布で有効な油処理剤(Self-mixingdispersant)を適用してはいかがなものであろうか。この航空機散布用油処理剤は、我が国では実用化されておらず、早急に考慮されるべきテーマである。
油処理剤の性能をテストするための試験油は、昭和48年に油処理剤の型式承認制が定められて以来、引き続きB重油が用いられているが、現在我が国ではこの油種は殆ど用いられず、一方、我が国沿岸での油流出事故は、C重油等によるものが多い。
したがって、試験油に関しても、時代の変遷とともに、見直すべき時期にきているのではなかろうか。船舶又は航空機からの散布に適した油処理剤の作用機構の相違、試験油の変遷等に伴い、油処理剤の性能試験法も当然見直されなければならない。過去の油処理剤使用例で、浅海域の生物に油処理剤の蓄積が報告されているが、これは不適切とされる極めて浅い海域で使用されたからである。この状況をふまえた上で、海洋生物における油処理剤の蓄積、分解、排泄等の機作についても研究する必要があろう。
優れた油処理剤であっても、流出現場でそれを適用するための器材が適切でなければ油処理剤の威力は発揮できない。そのために、この方面からの開発努力も必要である。
本委員会の会期が終了するにあたり、新型高粘度油用油処理剤の実用化、航空機散

 

 

 

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