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3.2 航空機散布用油処理剤の試作と要求性能

3.2.1 航空機散布用油処理剤の試作
平成9年1月2日に発生したロシア船籍タンカー「ナホトカ」号の船体分断・沈没による流出油事故は、発生箇所が沖合であり、かつ、荒天が続き、船舶からの防除処理が十分にできず、結果として流出油の沿岸漂着を余儀なくされた。
本調査研究は、このようなケースを想定し、航空機から散布する油処理剤の試作と要求性能について、3カ年計画で検討してきたものである。
航空機散布用油処理剤の試作目標は、
・航空機の搭載量に制限があるため、少量の油処理剤の散布で有効に流出油を乳化分散できること。
・油処理剤と油との撹拌を、海洋波に委ねること。
の2点にした。
(1)試作の問題点と方針
航空機散布用油処理剤は、界面活性剤と両親媒性溶剤(水にも油にも溶ける有機溶剤)を配合し、弱い撹拌で、油処理剤が油層を通過して水に溶け込むときに油を水中に引き込むというのが、作用メカニズムである。
航空機散布用油処理剤の試作は、両親媒性溶剤と界面活性剤を組み合わせることになるが、対象としている動粘度5,000cStの油(JIS K 2205 3種2号重油に相当)を乳化分散させるには、次のような問題がある。
?両親媒性溶剤は、油性溶剤に比べ、油と混合しても油の粘度低下を期待できない(両親媒性溶剤を加えた混合油の粘度は、油性溶剤を加えたときほど粘度が低下せず、逆に増粘してしまうケースも考えられる。)。
?高粘度油の場合、油処理剤中の両親媒性溶剤の配合比が大きいと、油処理剤の油への浸透性が悪くなる(外国の航空機散布用油処理剤は、比較的粘度の低い油を対象としているため、高粘度油に対しては浸透性が悪い。)。
?乳化性能試験方法については、あくまでも自己撹拌型であるので、通常型油処理剤の試験方法のように強い撹拌力で油滴を細かく分散させてしまっては、航空機散布用油処理剤の持つ本来の性能を評価できない。

 

 

 

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