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「みらい」は荒天域や氷海域どこまで迫れるか?

深海開発技術部

 

1. はじめに
平成8年7月17日、下関で改造中だった大型海洋観測研究船「みらい」(図−1)の後部船体が東京に到着。ドック内で初めて前部船体と一体になった姿を現しました。
ドックから海水が排水されて船底を見せるに従ってその大きさが改めて痛感されました。
これまで世界の主力観測船に比べて総トン数で2倍以上という大きさとともに、船の深さが大きいことが特に印象的です。満載喫水6.9mと乾舷6.3mを合わせた船の深さが13.2m。「白鳳丸」の喫水6.0m、乾舷2.9m、深さ8.9mと比べると乾舷がずばぬけて大きいことが分かります。
この大きな乾舷を採用するがどうかについて当初、当センター内で大きな議論を巻き起こしました。結局は荒大域で観測するにはまず海水打ち込みを減らすのが先決との考えと、ブイ格納庫や研究室など船内スペース需要に対応するために、乾舷を低くしたいという要望を押し切る形で現在の乾舷が採用されたわけです。
この「みらい」のセールスポイントである荒天域や氷海域に実際にどこまで迫ることができるのか、この点について考えてみたいと思います。

 

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図一1「みらい」完成手想図

 

2. 海洋開発審議会答申
「みらい」がオーソライズされたのは平成5年12月の海洋開発審議会答申「我が国の海洋調査研究の推進方策について」です。この答申では、ブイ等の大量搭載とともに、「荒天下でも観測が可能となる優れた航行性を有していること」と「極域における観測が可能となる耐氷性を有すること」の2点が掲げられています。これが旧原子力船「むつ」を海洋観測研究船に流用する大きなポイントだったわけです。
実際のところ、「みらい」の年間航海日数の半分を占めるブイ・ハンドリングの所要日数を少しでも短縮するため、ブイの設置・同収可能なシーステート(後述)をできるだけ上げておきたいところです。
また、北太平洋亜寒肝については、強波浪と活発な植物プランクトン生産により炭酸ガスの吸収源になっていること、淡水が中層まで沈降することによって気温上昇の影響を比較的短期間で海洋に吸収すること、そして、エルニーニョ現象やアジアモンスーン異常との関係で注目されている10年〜十数年オーダーの変動が見られることなどから、この海域で四季を通じてCTD採水できることがどうしても必要です。
さらに、氷縁域では、ポリニア(氷湖)やリード(氷中の開水路)の海面フラックス、海氷生成時に排出される高塩分水(ブライン)の沈降、植物プランクトンの大増殖など、気候変動や地球温暖化の解明の鍵となる多くの研究ニーズがあります。

 

 

 

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