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海外事情

カナダ滞在記

深海研究部 満澤巨彦
Kyohiko MlTSUZAWA
1. はじめに
喧騒の日本を後ろ髪惹かれる思いで離れ、雨雲の間から時折日がさすビクトリア同際空港に降り立つたのは、1995年12月1日のことでした。これから1年間の研究生活を送るInstitute of Ocean Sciencesは空港のすぐ近くにあり、知り合いのデータ解析担当の方の出迎えを受けました。私がこの研究所に興味を抱いたのは、1989年の9月、.米国シアトルで開催された0ceans '89会議に参加した際に、シアトルから日帰りでInstitute of Ocean Sciences(以下IOSと記す)を訪問する機会があり、響グループの責任打であるテービッド・ファーマー氏にお会いし、音響によるジョージア海峡の流れ構造の観測について紹介を受けたことによります。私は当センターにおいて、深海域における底層流と海底微細地形の相互作用に関する研究に携わっており、それらの計測に音響手法を応用することができないものかと考えました。初めての訪問から約7年、希望がかないここIOSで研究生活

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写真-1 IOS全景。左に格納庫・整備場、その後方が研究棟、右に桟橋が続いている

を送る機会をいただきました。
2.研究所の概要と音響に関する研究
カナダは、西は太平洋、東は大西洋、そして北は北極海と、それぞれ異なった3つの大洋に接しています。世界地図を広げてみると、このような3つの大洋の海岸線を持つ国はほかにはないことに気がつきます。これらの3つの海洋を理解するために、北太平洋についてはIOS、北大西洋に関してはベッドフォード海洋研究所、さらに北極海に関しては両研究所が連携し収り組んでいます。IOSは太平洋区に設置されているいくつかの海洋・水産関係の研究所の中の1研究所との位置づけで、「海洋環境や生物の生息域に関する研究を行う部門」と「海洋科学や海洋の基礎生産について研究を行う部門」が設置されています。さらに、その部門の下で、各分野やテーマごとにいくつかのグループに別れています。IOSには、現在200名程の研究スタッフがおりますが、周辺の大学や他の研究所からの研究者をあわせると350名程が活動しています。国際的な共同研究も活発で、アメリカ、日本、ヨーロッバなどとの共同研究が行われています。
以下に、私の所属する海洋音響グループの研究について紹介します。IOSにおける海洋の諸現象解明のための音響手法の開発は1978年ごろより開始され、ブリティシュ・コロンビア沿岸域における海峡などの流れや海洋表層の物理構造の観測、また1993年には琵琶湖において環境・物理計測等を行ったこともあります。このグループでは、海洋−大気間の相互作用に関連し、海洋表層で彼等により取り込まれた気泡がどのようにふるまい、分布するのかを正確に計測するための「音響レゾネーター: Acoustic Resonator」と呼ばれる装置の研究・開発を行っています。「庁響レゾネーター」は、直径

 

 

 

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