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2.2.2 OTC8007 海底岩盤中の音響伝搬特性及び振動伝搬特性について

Acoustic and Petrophysical Propertiesof Sea-floor BedrocksS.Assefa and J.Sothcott,PRIS,University of Reaging.U.K.

 

概要
海底の基盤(岩盤)を対象として、適切な圧力条件(1MPa〜10MPa)に於ける伝搬速度及び減衰特性に関して研究した論文はほとんど発表されていない。このように低い圧力に於いて測定される速度及び減衰値は、主として、微小な亀裂、間隙によって影響を受ける。しかしながら、圧力が増大するにつれて、そして微小な間隙が閉じるにつれて、速度及び減衰に対する影響は最小となってくるであろう。圧力が増加した状態に於いて、岩石中の速度及び減衰は、主として、構成している岩石の弾性率及び岩石が受けている(長い年月の間の)変質過程の程度により影響される岩石の間隙率によって決定される。この論文の目的は、低い圧力(実効圧力:10MPa)に於ける音響特性に対する微小な間隙の影響及び高い圧力(実効圧力:40MPa------この条件に於いては微小間隙の影響は最小となる)に於ける、岩石の音響的、岩石物理学的、並びに地質学的諸特性の間の関係を研究することにある。研究所に於いてこの種の音速及び減衰を測定することにより、適宜設定された圧力(深度)に於いて、岩石の各種の地質学的(例えば;地層の堆積)過程に於けるこれらの特性を、深い深度に埋められている状態よりも、より良く理解することが可能となる。
圧縮波(粗密波)及び剪断波(ねじれ波)の速度及び減衰の測定が海底の堆積岩及び火成岩の組み合わに対して、10MPa〜40MPaの範囲の実効的圧力の条件に於いて[Pore−FluidPressure(間隙流体圧力)より低い圧力に制限して]、実施された。測定周波数は、0.5MHz〜1MHzの範囲に亘っている。Winker及びPlonaにより1982年に考案された”パルス−反響”方式は、速度と減衰量(Quality Faclor)を測定するのに使用された。岩石の間隙率及び透過率は、それぞれ、0〜20%及び0〜5mDの範囲に亘っている。X線回折分析法、研磨された薄片の岩石学的研究、及び走査型電子顕微鏡(SEM)による観測の結果、ほとんどの砂岩はかなりの量の粘土(例えば;カオリナイト:岩石中の長石が分解して生じた残留粘土(Al2Si2O5、(OH)4、---訳者注)、Illite(白雲母に類似した粘土----訳者注)、及び緑泥石を含有している他多くの断片が存在していることが明らかとなった。火成岩のほとんどは、緑泥石化されていることも明らかとなった。
研究対象としとた岩石の速度及びQuality Factorは、大陸内部の同種の岩石の特性と比較すると、ずっと低い値となっていることが明らかとなった。長石、雲母、及び苦鉄質成分の粘土[例えば;輝石(カルシウム、鉄、マグネシウムに富む珪酸塩鉱物----訳者注)の緑泥石化作用]への変化により形成される微小間隙率及びそれに対応する弾力特性の劣化が、速度及びQuality Pactorが低くなる主原因となっている。海底の岩石の速度及び減衰モデルは、深深度に存在している岩石に対する地震データの研究・理解のために必須のものである。この研究の結果は、“モデル作成のために使用される速度及びQuality Factorの値は、通常推定されるよりも低い値としなければならない”ことを示している。
序論
海底の基盤(岩盤)を対象とした、適切な低い圧力条件に於ける伝搬速度及び減衰データは、ほとんど発表されていない。海底岩盤の音響的特性(速度及び減衰)についての知識は、より大深度に於ける、対応する特性の予測、及び速度及び減衰に関する実用的モデルを決定するために重要である。これらの岩石の音響的、岩石物理学的、地質学的特性間の関係から、音響特性に影響を及ぼす主要地質ファクターを理解することが可能となり、又、地震計測データの解釈が、より確実・容易となるであろう。

 

 

 

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