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国際船舶海洋構造会議(ISSC)準静的応答技術委員会及び理事・技術委員長会議出席報告

正員 角洋一*

 

国際船舶海洋構造会議(ISSC)第13回総会は1997年8月Trondheim(ノルウェー)で開催されるが,その技術委員会報告書作成および本会議運営最終準備のため標記会議に出席したので報告する。なお,国際船舶海洋構造会議(lSSC)総会は船舶・海洋構造物の構造関係者が開催する3年毎の会議であり,船舶海洋工学の構造関係についての最近の技術動向の分析と特定の技術課題についての国際的なベンチマークテストの実施が主要な活動である。4年後の2000年には第14回総会が日本の長崎で開催されることが決まり,本会船体構造委員会においてその準備が開始されたところでもある。以下に,出席報告の概要を記す。
日時:9月11日第?.1(準静的応答)技術委員会
9月12−13日理事・技術委員長会議
会場:Hotel Admiral,ベルゲン(ノルウェー)

1 第?.1(準静的応答)技術委員会

今回の会議の主な目的は1997年8月にノルウェーで開催されるISSC’97へ向けた委員会報告書案のうち主として海洋構造物およびクルーズ船関係の取りまとめてあり,北欧の委員を中心に集まり審議を行った。出席者はMr. G. Bacicchi(Italy),Mr. R. Loseth(Norway),Prof. Y. Sumi(Japan:Chairman),Mr. J. Waegter(Denmark)の4名である。
船舶海洋構造物の強度評価に直接計算法が本格的に適用されるようになって,従来にも増して一層,荷重,応答,強度,評価規準相互の整合性が求められるようになってきているが,その流れの中で,各国船級協会が,独日の統合化された評価システムを発表している,本報告では,ABSのSAFEHULL, LRのSHIPRIGHT, NKのPRIMESHIP等を概観するとともに,特に最近の強度評価にとって最重要課題となってきた疲労強度評価についてその現状における問題点を指摘するとともに,今後の重点研究項目を提言する予定である。一方,海洋構造物の強度評価については船級協会の動きよりもむしろ現在アメリカおよびヨーロッパを中心にSNAME, DnVの研究をべースにISOにおける安全性評価の作集部会の活発な活動が進行中なので,この動きを中心に研究動向の調査が行われる。
海洋構造物については,設計時のT継手疲労強度評価,座屈強度評価およびグラウト継手が研究動向調査の対象に取り上げられる。特に,T継手疲労強度評価については米国のAPIコード,英国のHSEコードがあるが,後者は最近大幅に改訂されたので,その背景にある研究が詳しく紹介される。また,船体構造で最近問題になっているホットスポット応力の評価法についても比較的歴史のある海洋構造物における同概念の説明が,実験結果,シェル要素による計算結果,3次元ソリッド要素による計算結果との比較を踏まえて行われる。
今回の報告書では,日本造船研究協会のSR219で行われた船体構造実寸モデルにおける横桁と縦通肋骨との交叉部ホットスポット応力計測に対応するベンチマーク計算が各国香具により行われている。SR216を発展させたNKの疲労設計ガイドライン,DnVの最新の疲労設計ガイドライン,また前述の海洋構造物に関する資料も加え,本報告書の作成によりホットスポット応力算定に関する理解をより深めることができると思われる。
クルーズ船については,船体の長大化・大型化および公室に要求される大開口に伴う材科構造上の問題が主要課題として検討される。また,最近の設計では安全性の観点からボードデッキと水線を接近させる傾向にあり,これがどの程度主船体上部甲板の縦強度上の有効性を低減させるかについても検討結果が紹介される。

2 理事・技術委員長会議

会議後半の理事・技術委員長合同会議については上田理事からの本会誌への報告との重複を避けるため,詳細は行くが,日本委員を中心に提案していたISSC2000に向けた構造設計実務者に直接役立つ標準的計県法や原雌的データをISSCとして提案するための2つ特別委員会が設置の方向で検討されることになった,設計荷重に関するテーマと最終強度評価に関するテーマが候補に挙がっている。理事会と関係する技術委員会委員長の間でこの特別委員会の委員長選出と具体的テーマの設定を早急に行うことになった。

 

*横浜国立大学工学部

 

 

 

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