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自治の不振でも侵害でもないということになるのだろうか。
さて、このように、中央省庁と都道府県とのあいだの人事交流については、「天下り」批判とそれへの反論という形で、議論の積み重ねがなされてきた。もっとも、議論ばかりが先行し、実態把握が遅れているという嫌いがあったが、それについても、ここ数年来、正確な実態把握の試みがなされるようになってきている3)。これに対して、都道府県と市町村との人事交流については、議論の積み重ねも実態把握もこれまで充分になされてきたとはいいがたい。そこで、本稿は、この問題についての簡単な実態把握をおこなったうえで、若干の議論を試みたい。
一般に、都道府県と市町村との人事交流といっても、その実態は都道府県によってかなり多様である。表9−1は、いまから約15年ほど前の資料であるが、これを見ても、都道府県によって状況にかなりの逢いがあることがわかる。今回筆者は、都道府県と市町村との人事交流に関して、筆者の居住する福島県を中心に、東北・北関東の8県について面接、照会および資料収集などをおこなったが、やはり、県によりかなり状況に違いがあった。
2.市町村から県への職員派遣
市町村から県への職員派遣については、地方自治法第252条の17による派遣と、実務研修の形態による派遣が考えられる4)。前者の場合、同条第3項により、派遣職員の「給与、手当(退職手当を除く)及び旅費は、当該職員の派遣を受けた普通地方公共団体の負担」(括弧内は原文)とすることが定められている。このように、自治法上の派遣が受入団体側の負担とされているのに対して、実務研修による派遣の場合、その性質上、職員を派遣した市町村が給与を負担している。
今回の調査では、県が自治法上の派遣の形態で市町村職員を受け入れている例は稀であった。県が工業団地や公園建設などに際して地元市町村から応援を要請するような場合を除いて、市町村職員を自治法上の派遣の形態で受け入れるケースは少ないようである。
これに対して、実務研修に関しては、8県すべてが、「実務研修要綱」に類するものを備えており、毎年度一定数の職員を受け入れている5)(表9−2参照)。「要綱」では、一般に、研修の目的、研修期間、派遣職員の身分・服務・給与その他必要な手続きなどについて定めている。このうち、身分については、どの県においても、派遣団体(市町村)職員と受入団体(県)職員の身分を併任するとなっており、給与については、市町村の負担

 

 

 

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