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郡)がベッドタウン化と、それぞれ結びつけて、その相対的に頻繁なあるいは恒常的な「相互派遣」の背景を説明することも可能であろう。
しかし、今回のヒアリングでは、特に県から派遣される職員の、派遣先での地位と役割についてのデータを得ることはできなかった(ヒアリング当時、ちょうど派遣経験者からその経験を聴取しているということであった)。それでも、以下のような傾向とこの制度についての「県側」の意向を知ることができた。
まず、市町村側は概して「幹部候補生」を派遣する傾向があるが、それは将来の「人的パイプ」の敷設作業の一環と考えられる。ついで、これも数字としては確認できなかったが、市町村から派遣される職員は、地方課・地域振興課などを「選り好みする傾向」があるという指摘もあった。さらに、県庁への派遣期間は通常1年だが2年が望ましい、という感想も聞くことができたが(県から市町村への派遣の方は、通常2年間となっている)、これについては、市町村側の慢性的な「人手不足」があってきわめて困難であろうという観測も付け加えられた。最後に、表8−3にもみられる芸北、備北地域の「低調さ」については、職員研修への参加と同様、この制度についての「首長の姿勢」がある程度反されたものとの「評価」を聞くこともできた。
確かに、県から市町村への派遣理由には「権限移譲の事前支援もある」という人事課の抱く意向を考慮すれば、こうした厳しい「評価」も可能であろう。しかし、派遣制度の運用については、先述した当該自治体の社会・経済的条件、地理的条件(県庁との距離)、あるいは職員組合のこの制度についての賛否の姿勢をも考慮すること必要であろう。備北の中心都市、三次が過去5年間、派遣実績がゼロということについても、元社会党代議士である現市長の自治に対する「姿勢」を表明するものであるかもしれないからである。
逆に市町村の側が、必ずしも派遣要綱にある「緊急に事務処理能力の強化を図る必要がある行政分野」の担当者ではなく「幹部候補生」を選定し、しかも県庁内の市町村対応部課に集中するという傾向も、見過ごされてはならない問題であろう。96年の『提言』の言う「マンパワーの育成」への支援は、決して「同一職場の縁」に由来する「パイプ役」を育てることではないからである。

 

 

 

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