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第2部 各地の事例

 

第8章 広島県における県−市町村関係

 

川崎信文

 

1.はじめに
広島県は、かつて宮沢知事時代に全国に先駆けて、県権限の市町村移譲を実施した歴史を持つが、地方分権の時代といわれる今日、再びこうした方向での事業の実施に取り組もうとしている。ここでは、まず中国地方の市町村長と広島県の町村長の地方分権化への期待と府県制度への評価ついで広島県における県内分権化(市町村への権限移譲)の歴史と現状、最後に県・市町村関係の一環をなす職員の相互派遣制度を対象として、地方における分権化の動向を概観し、若干の検討を行いたい。
2.県内市町村長と地方分権改革
(1)分権化への意向と姿勢
1996年6月に地元紙、中国新聞は中国5県、318市町村長(回収率86.5%)を対象に、20項目に及ぶ地方分権に関する意向調査、「地域づくり・地方分権アンケート」を実施した。ここでは、本調査研究に直接関わる問いとそれへの回答の特徴を紹介してみよう。
まず、地方分権推進委員会の中間答申提出を経た時期に、こうした分権の機運を歓迎するかどうかという、一般的な意向についてみてみよう(問16)。5県とも8割以上の首長が「歓迎する」と答えているが、「歓迎しない」という首長も15.6%存在する。これは特に人口規模の小さい自治体の長にみられ、5,000人未満では21.4%、5,000〜10,000人で16.7%に及んでいる。こうした「歓迎しない」首長が示した理由(2つ選択)の上位には、「財源の伴わない権限移譲は負担が増すばかり」(83.7%)、「国から権限移譲されると自治体の行政事務が今以上増える」(44.2%)及び「権限の受け皿として市町村の体制が整っていない」(39.5%)があった。
次に、ごく一般的に中央と地方の行政構造のあり方を問う項目(1つ選択)では、「市町村の広域連合で圏域行政を進める」(39.4%)が最も多く、「現状の国、県、市町村の三層制を維持すべき」(30.5%)がこれについでいる。ここでの選択項目には「道州制に

 

 

 

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