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第7章 地方分権と規制緩和の関係に関する予備的考察

−食品表示規制問題を素材として−
福島康仁
1.分析の視点
本章では、規制緩和と地方分権という今日行政改革の2大課題を扱うが、両者の関係については、必ずしもパラレルに論じられるべきではないとする意見もある。すなわち、イギリスのサッチャリズム下でおこなわれた土地改革に見られるように、規制緩和が地方分権を必ずしも持たらすとは限らず、むしろ中央集権化させた例もあるからである1)。
しかしながら、本稿では両者の関係を行政改革委員会の見解に基本的にしたがい分析を進めていきたい。すなわち、行政改革委員会は1995年12月14日、「規制緩和の推進に関する意見(第1次)−光り輝く国を目指して−」のなかで規制緩和を推進する際の関連する考慮点として、国と地方の関係について次のように言及している。すなわち、「規制緩和は、我が国社会経済の活性化と構造改革の視点から、国、地方を通じて行われるべきものである。単に、国の規制を地方に移譲したり、国の規制を緩和しても地方でそれを逆行する措置を行えば、構造改革の進展の阻害要因となりうる。地方公共団体においても、規制緩和の趣旨を踏まえ、適切な措置が講じられることを期待する。規制緩和との関連においても、国と地方の役割分担について十分な議論がなされるべきである。」として、規制緩和と地方分権はパラレルに論じられるべきとの趣旨を読みとることができる。規制緩和の結果、自治体が実質的に規制主体となりうるということであろう。
そこで、本稿では、規制緩和後の規制主体としての自治体と規制客体との変化関係を中心に眺めていきたい。事例として、食品衛生法の改正に伴う食品の表示規制の変化による自治体と規制客体たる業界団体と消費者団体との関係についてヒアリング結果をもとに論ずるちのとする。
2.わが国における公的規制議論の整理

 

 

 

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