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第5章 地域政治システムの二元的改革のための予備的考察

−議会の活性化と住民参加の拡充による政策決定への住民のアクセス可能性の向上−

 

江藤俊昭

 

1. はじめに

 

地方分権に伴って自治体の意思決定についての関心が増大せざるをえない。現代日本の政治行政システムが中央集権構造であるがゆえに、その構造に自治体の意思決定は左右される、それに対して、地方分権改革によって、自治体の意思決定がこの構造からある程度自由になるとすれば、自治体の意思決定自体の重要性が増大することになるからである。地方政府の規模、行政運営改革などとともに、意思決定への透明性や住民参加の拡大などが地方分権改革には必要となる。
『地方分権推進委員会第1次勧告−分権型社会の創造−』(1996年12月)は、抽象的でいまだ一般的ではあるが、同様の文脈から議会の活性化や住民参加の拡充をとりあげている。つまり、その第1次勧告は、地方分権に伴う自治体の行政体制の確立が重要であることを挙げ、具体的には、公正の確保と透明性の向上、行政改革の推進、市町村の自主的合併と小規模市町村への支援、広域行政の推進とともに、住民参加の拡大の重要性を指摘している。
つまり「地方分権の推進により、地方公共団体はこれまで以上にその政策形成過程への住民の広範な参加を促し、行政と住民との連携協力に努め、住民の期待と批判に鋭敏かつ誠実に対応する責任を負うことになる。そこで、地方議会の活性化方策を検討することはもとより、地方公共団体における住民参加の機会と手段を拡大し多様化させるための支援措置として、現行の直接請求制度の見直しなどについて検討する必要がある」と提起しているのである。自治体の意思決定への関心は、地域政治システムの二元的改革戦略、つまり地方議会の活性化と住民参加の拡充に結実しているのである。「分権による地方政府機能の増大は市民の決定範囲の拡大をともなわなければ専横に陥る危険性をはらんでいる。…地方議会の改革とあわせて市民決定の範囲拡大を提案したい」1)という提起は同様の文脈からのものとして理解できる。

 

 

 

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