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第1部 地方分権をめぐる諸課題

 

第1章 広域自治体としての都道府県

 

礒崎初仁

 

1.はじめに
現在、地方分権推進委員会を中心に、国から自治体への事務移譲を中心に地方分権の検討が本格化している。そこでの検討や提案の多くは、現行地方自治制度における都道府県と市町村の二層制を前提とし、まず国から都道府県への権限移譲を求めることを優先するという認識でほぼ一致している。この「受け皿論」の棚上げは、本来、立場や意見が異なる自治体間で一致して国から自治体への分権を求めるため、意識的にとられた方針、戦略だといえる1)。
推進委員会の第1次勧告(1996年12月20目)をみても、権限移譲の具体的内容は、現行の機関委任事務を都道府県の自治事務に切り替えるものが多く、市町村の権限とするものは例外的である(勧告第3章・第4章参照)。また、都道府県と市町村の関係についても、「基礎的自治体としての市町村と広域的自治体としての都道府県というそれぞれの性格に応じた相互の役割分担を明確にし、新たな視点で対等・協力の関係を築いていく」という方向で引き続き「検討する」というにとどめている(勧告第2章?U)。
しかし、地方分権は、本来住民に身近な市町村を中心に行われるべきことは広く共有された認識であり、しかも1980年代後半から第二政令市構想など都市自治体の強化が求められてきたことから考えると、国から地方への権限移譲の議論が一段落すると、早晩、都道府県の機能と市町村への分権に関する議論が浮上してくることは避けられない。すでに一部の大都市には、推進委員会の勧告内容に不満の意を表明する向きもある2)。その論議のなかで、道州制論、廃県置藩論などの府県制度改革の論議に結びつく可能性もある。都道府県優先の戦略と自治体“同盟”は、決して強い基盤をもつものではないのである。
はたして「分権型社会」においても、都道府県は必要なのか。都道府県は、どのような性格の存在として、いかなる機能をもつべきか。その規模・区域は現行のままでよいのか。そして、市町村とはどのような関係を築くべきか、大都市との関係はどうするか。そのため、都道府県にはどのような改革が求められているか。都道府県をとりまく問題は、幾層

 

 

 

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