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2・3・5 導波管の敷設
(1)導波管のエネルギーロス
導波管内の減衰は、管内の誘電体による損失と、管壁を流れる電流によるもの(オーム損)が考えられるが、管内は一般には中空で、誘電体が空気の場合には損失はきわめて小さく無視できる。
ただし、雨水が管内に浸入した場合には、減衰は急激に増大する。
導波管壁が完全導体であれば、導電率は無限大で、すなわちオーム損はないが、実際には、どのような導体でも導電率は有限で、必ず幾らかの抵抗をもつものである。したがって、導波管の管壁に電流が流れれば熱を発生する。これは伝搬する電磁波エネルギーの一部が熱エネルギーに変わったもので、管軸に沿って電磁波は減衰する。
Xバンド(9GHz帯)レーダーの場合の損失は大略次のとおりである。
直線距離1mあたり約0.1dB
ベンド1個あたり約0.15dB
ツイスト1個あたり約0.3dB
フレキシブル1ftあたり約0.4dB
この導波管ロスはレーダーの性能にどのように影響するかを考えてみよう。いま、仮に直線導波管の全長が7.5mで、ベンドを5個使用して50kWの送受信機を装備したとすると、
0.1(dB)×7.5(m)=0.75(dB)
0.15(dB)×5(個);0.75(dB)
0.75(dB)+0.75(dB);1.5(dB)
となる。この1.5dBの損失は送信時に減衰したものであるが、レーダーの場合は受信時にも同じ導波管内を伝搬してくるから、往復で損失は倍になり、実に3dBの減衰となって、50kWの出力が半分の25kWの送信出力を持つ2ユニット型と同等の能力となってしまう。
このような理由から、第1レーダーに50kWの3ユニット型、第2レーダーに25kW2ユニット型を装備しても、導波管の敷設のやり方次第では、第2レーダーの方がよく映る結果になるのは明らかである。
上記の導波管ロスは、内部にさびやごみのない、全く新しい導波管の場合であって、漏水などによるさびの発生や、管壁のよごれ等によって減衰量は更に増加する。

 

 

 

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