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8.一次試作品の設計及び製作

 

8.1 既存いかだによる予備的検討

現在の救命いかだの復原性能を調べるため、一例として、T社の25人用いかだ(TRA-25型)について、重量重心計算(表13参照)及び排水量計算(表14参照)を行った。その結果重量に対する喫水は16?前後、浮心高さは10?程度なので復正の検討に浮心の移動は無視することとして復正限界水線角度を求めた。それによると、復正限界水線角度は、約65度であり(図1参照)、横転状態からの自己復正のためには、天幕支柱外部に浮体を追加し、重心位置を極力低くすると共に船体中心線より左右舷どちらかにずれるよう部品、艤装品等の配置を考慮する必要があることがわかった。しかしながら、天幕支柱外部に追加する浮体は、横転状態(90度)からの復正には有効であるが、転覆状態(180度)からの復正時には、むしろ復正を阻害することがわかったため、外部に浮体を追加せず、天幕支柱の形状を円弧状に近づけることで復正性能を保つ方針とした。

 

8.2 試作原案

天幕支柱の形状を円弧状にし、さらに、下気室の幅を狭め、全体の断面を円に近づけた形状とし、重心位置をある範囲に設定すれば自己復正の可能性がある原案を作成した。これをもとに、以下の設計方針に従い試作品を設計することとした。試作原案を図2〜3に示す。(1)基本構造として主気室の形状は楕円型とする。
(2)天幕の開口部を大きくする。→逆転時天幕内の水量を最小限とする。
(3)天幕は、従来どおり支柱の外側に取り付ける。
(4)縦横比を2前後とし、幅をやや狭くする(幅2.6m〜2.7m×長さ5.8m〜6.Om)ことで支柱の剛性を上げる。
(5)天幕支柱は、支柱全体の剛性を上げるため3本を検討する。
(6)重心位置を下げるため、艤装品の床上設置及び床下設置を検討する。

 

8.3試作原案に対する復原性計算

(1)復正限界角度
試作原案いかだの重量、重心は図3に示すように170.78?、重心の高さは0,243?、左右位置は右舷に0,551mであり、この数値及び気室の排水量をもとに復正限界角を推定したところ、各部の変形がないと仮定した場合、いずれの横転角度からも自己復正するとの感触が得られた。
復正限界角度推定図を図4に示す。
(2)復原性計算
計算は、救命いかだを180度反転し、天幕内にある程度の水が入っている状態での復正の可

 

 

 

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