日本財団 図書館


 

E編 非常用位置指示無線標識装置(121.5EPIRB)

1.121.5/243MHz EPIRBの生立ち

すでに、B編で述べた通り、この121.5/243MHz非常用位置指示無線標識装置(以下121.5/243EPIRBという)のEPIRBは、GMDSSとは関係なく、1986年(昭和61年)7月1日に発効した海上に於ける人命の安全のための国際条約(SOLA条約)の二次改正(救命設備関係の改正)によって、国際航海に従事する500GT以上の船舶に装備されることになったものであるが、GMDSSでは、このEPIRBは規定されていないので、1986年7月から1992年2月の間に建造されたか、される船舶に装備されるものである。
このEPIRBの送信に使用される電波の周波数である121.5MHzと243MHzとは、もともとは、航空機のELT(Emergency Locator Transmitter、非常用測位用送信機)に使用されているもので、海上飛行する航空機によって聴守されている周波数である。船舶用のEPIRBも、航空機のELTとまったく同じ周波数と信号形式が使用されており、その信号の聴守は、船舶や船舶用の海岸局には義務化されていないので、専ら航空機に頼る他、GMDSSB編I.1項のところで述べたようにCOSPAS−SARSATの衛星でも受信されるが、406MHz帯の場合とは異なり、衛星上でその受信結果を記録できないので、衛星での受信結果の中継は、そのLUTの周辺の海域に限定され、また、その送信信号にはEPIRBの識別符号が付加されていないし、また、送信電波の周波数の安定度も測位用としては十分でないので、測位精度は、20?程度と悪く、そのために衛星の軌道の左右対称のところに位置が求める場合も少なくないという制約もある。
しかしながら、このEPIRBも人命の安全のために重要な装置であり、SOLAS条約中でも毎年1回の定期的な検査と試験が要求されている(GMDSSはこの種の規定はない)ので、その定期的な保守と試験は重要である。

2. 121.5/243MHzEPIRBの構造

前項でも述べたように、121.5/243EPIRBは1986年7月から1992年2月までに建造された500GT以上の国際航海に従事する船舶の各舷に1ずつ装備しておいて、非常の際に救命艇または救命いかだに運んで、その中で使用する無線装置である。従って、手動で発信の操作をする持運び式の装置で、水密式で水に浮くことができ、水中でも発信はするが、本来は救命艇または救命いかだの上で送信をする装置である。
このEPIRBは普通、本体、アンテナ及び先端に取付け環を付したロープとから構成さ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION