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C編 捜索救助用レーダートランスポンダー

第1章 総論

1.1 レーダーの概要
捜索救助用レーダートランスポンダー(SART)はレーダーを相手方とする装置であるので、SARTの解説に先立ち必要な範囲でレーダーの原理とその概要を述べる。
1.1.1 レーダーとは
レーダーはその語源(Radio Detection and Ranging)からも明らかなように、鋭い指向性のアンテナから電波を発射して、その送信波の物標からの反射波(エコー)を受信することにより、目標の「存在」と目標までの「方位」と「距離」を知るための無線装置である。
一方遭難者側に備えるSARTは、水平面無指向性のアンテナでレーダー電波を受信した時だけ第3項で解説する応答波を送信し、このSARTの電波を受信したレーダー指示器のブラウン管の映像上に遭難であることの識別符号と位置を表示させる。
レーダーは航行の安全を計るために、人間が周囲を肉眼で見る能力を増大させる目的で使用されているが、電波の特質により暗闇や濃霧時でも有効であり、現用されている電波方向探知器にくらべて正確な方位と共に距離の情報が得られる事も捜索救助活動の上での大きな利点になる。
なおレーダー装置には、移動する物体からのレーダー電波の反射がドプラー効果により僅かに周波数が変化する事を利用して相手の速度を求めるドプラー・レーダーや、電波に換えてレーザー光を使用するレーザー・レーダーなどもある事を付記しておきたい。
1.1.2 レーダー装置の概要
以下に全世界的に普及している船舶用のパルス・レーダーの概要を説明する。図1−1は現用の船舶用レーダーが航行支援用として運用されている場面を示す。レーダー送信波としてはそのエコーにより表示されるレーダー映像上の物標の解像度を良くするために鋭いパルス幅(τr)0.08〜1.0μs程度のものが使用される。τrが細いほど映像はシャープになるがレーダー受信器の帯域幅(Br)が広いものが必要になる。レーダー受信器の

 

 

 

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