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1.5 406MHz極軌道衛星利用EPIRBの実際

406MHz極軌道衛星利用EPIRBは、常時、主として国際航海に従事する船舶にとう載しておいて、その船舶が遭難した非常の際に、本船から、救命艇や救命いかだに持込むか、その付近の海上で、または、船舶が沈没したときには水圧センサーによってその船舶から離れて、自動浮上して規定の遭難信号を406.025MHzの電波に乗せて自動または手動で発信するとともに、航空機によるホーミングのために121.5MHzの遭難信号を発信するものである。緊急で時間的余裕のないときには、船舶から海上に投入して作動させることもできる。図1.5に示すように、このEPIRBからの電波は、常時4以上の衛星が地球を回っているCOSPAS/SARSATの衛星で受信され、その衛星で受信周波数が測定され、またEPIRBからの送信の内容が記録される。この衛星が測定し、記録した内容は、常時その衛星から順次、繰返して放送されている。各国で設置しているローカル利用者局(LUT,Local User Terminal)と呼ばれる地上局(前述したようにわが国の場合、海上保安庁が横浜に建設を進めている)は、この衛星からの放送を受信して、そのEPIRBからの送信の内容を解読するとともに、衛星が受信をしたEPIRBからの信号の受信周波数からその送信の場所、すなわち、EPIRBの位置を計算する。後に詳しく述べるように、EPIRBからは数十秒ごとに約1/2秒の送信をし、衛星はこのEPIRBの上空を通る間の10数分間に、この信号を原則として10数回受信をする。この10数回の受信周波数は、衛星の移動によるドップラー効果を受けて変化し、この周波数の測定値を結ぶと図1.6のような曲線になる。この曲線の中央部にある曲率が逆転する点を求めると、この点は衛星がEPIRBに最も近づいた点で、この点ではドップラー周波数がゼロ、すなわち、受信周波数が送信周波数と等しくなる。また、この点での曲線の傾斜から、衛星とEPIRBとの間の距離が求められるので、衛星の位置から原理的にはEPIRBの位置が衛星軌道の両側に求められることになる。しかし、実際の計算では、得られた曲線の全体の形をきめている測定値のすべてを使用して、また、地球の自転によるEPIRBと衛星との距離の変化をも加味してEPIRBの位置を軌道の片側に特定してより精度よく求める。位置の測定の95%程度は、EPIRBの位置を軌道の片側5?以内に特定できるとされている。
前述したようにアメリカ側とソ連側ともそれぞれの衛星は、他の目的の衛星に相乗りした衛星であるので、それぞれの目的によって両者の衛星軌道は完全には一致していないが、大略して、1時間数十分で地球を一周し、一日に4〜5回は地球上の各点を通るので、平均1.

 

 

 

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