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5.2.4潜水船の居住性について
(1)はじめに
SOF委託事業「大深度長期高効率海中動力源システムの開発」では、大深度に適用可能な高圧燃焼排ガス液化排出型外燃棚関動力源システムを開発すべく、主要構成要素の設計・試作を行っている。前項までは、深度6500m級の長期行動型有人潜水船を対象とした実機用動力源システム及びこれを搭載した有人潜水船の要目検討および配置検討を行った。
長期行動型有人潜水船では、その行動期間中、複数の人間が船内の限られた空間の中で物理的及び心理的制約のもとで起居を共にすることとなる。そのため、このような潜水船においても、居住性を全く無視することは難しく、作業効率の面からも考慮が必要と思われる。ここでは、実際の設計上居住性に大きな影響を及ぼす一人当たりの容積について調査を行った。
(2)作業空間に関する研究
一定の期間、人間が制限された空間で作業を続けるとき、必要とされる1人当たりの容積について調査した。この種の調査は宇宙船、潜水艦等で過去行われているものであり、その中で任務期間による一人当たりの許容体積が示されている。表5.2.4-1(1)に任務期間による一人当たりの許容体積を示す。ここでは不許容閾値と許容閾値が示されている。ここでは、前項にて計画した潜水船配置から、その居住性を検討した。操縦室、居住室の内径を2.2m(2基、5人)とするならば一人当たりの容積は2.23m3となる。これは表5.2.4-1から7日間の任務期間での許容体積閾値と不許容体積間値の間に入るものである。このことは現計画のオペレーション条件においては、十分とは言えないが必要最低限以上の空間を確保していることになる。
一方、長期宇宙作業に推奨できる作業空間に関する研究をまとめたグラフを図5.2.4-1(1)に示す。ここでは、様々な研究成果と宇宙船、潜水艦、囚人室等の実績とが示されている。また、本研究での一人当たりの体積を印で示している。表5.2.4-1の閾値と同様に、容積としては各種研究の成果とも大きく異ならない範囲内にあると考えられる。
(3)まとめ
実機の計画に当たっては、居住性に関して単に容積だけでなく、食事排泄等の生理的問題、また心理的問題についても検討の必要があるとともに、本船は科学者など訓練されていない人を対象とするため、これらのことを加味して居住区の容積及び配置を検討し、実機システムに反映する必要がある。上記の結果より、本研究で検討した海中動力源を搭載した潜水船は必要最小限の居住性を確保していると考える。
参考文献:(1)「人間−環境系」−人間機能データプックー、人間−環境系編集委員会編、1973
(2)「海中居住学」、James.W.Miller,Ian.G.Koblik(関邦博他共訳)、1992

 

 

 

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