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3.2高圧燃焼技術

3.2.1高圧燃焼技術について
1)高圧燃焼の必要性
現在、国内で市販されているスターリングエンジンの燃焼器圧力は、常圧である。その理由の主たるものはエンジンを陸上で使用するという前提に基づいている。すなわち、エンジンを陸上運転する場合、高温の燃焼排ガスは密度差で大気に容易に排出可能なため、特別に加圧する必要がない。
しかし、大気を吸入する潜水艦用スターリングエンジンは、排ガスを海水中に放出する必要上、2〜3MPa程度加圧し、その圧力にて排出可能な潜水深度200m程度を許容している。
本研究で開発するのは6500m級の潜水深度を許容する潜水調査船の動力源である。この深度にて排ガスを排出するには65MPa〜70MPaという高圧が必要なため排気をガス状態で放出するのはエネルギー効率上、難しい。しかし、排ガスが液化出来ればポンプで必要とする圧力まで容易に加圧可能である上、排気ガスを構成するものが水蒸気と炭酸ガスだけならば海水温レベルで液化可能である。こうしたことから燃焼には窒素が存在する空気を使用せず酸素を使用することになった。
炭酸ガスの凝縮温度大略は、圧力が5MPaの時に15℃、7MPaの時は28℃という温度レベルであり、凝縮系の実用化に於いても問題の無い水温である。従って、システム全体をこれらの圧力で統一する必要上、高圧燃焼が技術課題になった。
2)高圧化に伴う課題
高圧下で良好な燃焼を確保するには一般的に次の課題がある。
?燃料供給圧力と燃焼器圧力との差が小さい場合は燃料投入量が変動したり、微粒化が不十分となり煤の発生が増加する。
?燃焼時の酸素と燃料との拡散速度が不足し不完全燃焼となる。
また、本研究で使用するスターリングエンジンとして船内配置を重視したアイシン精機(株)製作の横型に決定されたが、これによる課題は次のとおりである。
?熱浮力の影響が強く出てヒータに大きな温度分布が発生する。
?必要な燃料量の投入が困難となる可能性がある上、ヒータ温度のアンバランスによる熱効率の低下が避けられなくなる。
その他の影響されるものとしては、次のとおりとなる。
?燃焼器に内張りする断熱材が圧力でつぶされるため、断熱材としては耐火材レベルの熱伝導率を有するものしか使用できなくなり放熱損失が大幅に増加する。
?高圧ガス製造装置の陸上試験設備であるため、常圧仕様に使われているコンプレッサーブロック(鋳物)を機械加工で作り替えることが必要。これによりヘリウム通路抵抗が大幅に増加し総合熱効率の低下は避けられない。
等である。そこでこれら課題解決のための経緯を以下に述べる。

 

 

 

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