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3.動揺の少ない船型の開発

3.1船体運動理論による動揺の少ない船型の開発

3.1.1)フェリー船型
本研究の目的に沿って、動揺の少ない乗り心地の良い船の設計指針を、理論解析によって探ることを試みる。すなわち、ある船型を原型として動揺の少ない最適船型を見い出す試みをするのではなく、系統的に設計主要目を変更した場合に動揺特性がどのように変化するのかを明らかにする。
1)解析法
船型の評価は、乗り心地の観点から、?「向い波中のあるレベル以下の上下加速度の分布範囲の広さ」と、波浪中推進性能を左右する?「向い波中の波浪中抵抗増加重」で行う。なお、最近のフェリーには、乗り心地の観点から減揺タンクやフィンスタビライザーなどの減揺装置が一般に設けられているので、本章では横揺れに関する評価は特にしない。
通常航路を念頭において基本設計は展開される、すなわち、海象を想定した上で具体的に有次元値で評価を行う。ここでは、航路は特定されていないので、宝田の研究に倣い、下記に示す3海域の年間平均海象1)を使用し、検討を進める。

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理論計算法は、通常のストリップ法であるが、断面流体力の計算は2次元特異点分布法(close fit法)で行う。計算状態としては、満載状態、航海速力時を取り上げ、長波頂不規則波中の上下加速度の平均値(標準偏差)並びに波浪中抵抗増加量を求める。計算は、以下で述べる原型およびシリーズ構成船型について実施し、船の長さの影響は、相似的に拡大させた船型を想定し調査する。具体的には、船型要素を不変として、すなわち、規則波中の無次元応答は同一として船長250mまでを検討の対象とする。
2)対象船型の選定
理論検討の対象とする船の大きさは、乗り心地に強い影響を及ぼす動揺そのものが問題となる中小型船を取り上げるのが最も妥当な選択と考えられる。また、船種としては、不特定多数の乗客が乗る可能性が高いフェリーを対象とする。理由は、実船計測はフェリーで実施するので、実船計測結果との比較検討を行う上でも、最も合理的であると考えられるからである。
理論検討の原型船型のモデルとしては、実際に就航している船で、かつ実船計測が可能な船ということで、臼杵〜八幡浜航路に就航しているフェリー「ニュウ九州」を考える。この船の主要目を下記に示す。

 

 

 

 

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