1. オートパイロットの新制御方式
株式会社トキメック
MRDセンタ ジャイロシステムグループ 羽根 冬希
1. 目的及び背景
1.1 船舶用オートパイロット技術の流れ
オートパイロットで構成する自動操舵系を図1に示す。オートパイロットは、設定針路に船首方位を追従させるサーボ系を構成する制御装置であり、古くからその時期を代表する制御理論の応用分野である。
オートパイロットは設定針路と船首方位を入力して、命令舵角を出力する。操舵機は命令舵角を入力し舵角を出力するアクチュエータで、船体に旋回角速度を発生させる。方位検出器(ジャイロコンパス)は波や風の外乱を加えた旋回角遼度を検出し船首方位をオートパイロットにフィードバックする。
表1に、オートパイロット技術と制御理論との関係を示す。
制御対象のカーフェリー、コンテナ、タンカなどの操縦性能は、胴体、舵やプロペラなどにより個々の差異をもち、載貨状態、波風、船速の影響により変化する。
PID制御方式は、理論的な設計手法というより、必要な制御ゲインの調節機能を装備して、個々に操船者の経験や勘により調整する傾向が強いものである。現在でもこの方式が採用されている理由は、人間の判断による調整の容易さが優れていることによる。
1960年作に現れた現代制御理論では、異なる制御対象でもモデル化した構造が同一であれば同一の構造をもつ制御系を利用でき,1970年代に現れた適応制御理論では、制御対象の構造が既知であればその特性を定める船体パラメータを推定できることを示した。
MRACS方式では、操船者の調整考軽減するため、実際の船体パラメータを推定する適応制御,広範囲の船種をカバーする制御系の理論的な設計手法を用いた最適制御とカルマンフィルタによる制御を採用したものである。
しかしながら、最適制御では制御対象とモデルに明白な誤差をもつ場合の閉ループ系の最適性や安定性が保証されていなかったり,周波数領域の見通しが悪いことが上げられる。
前ページ 目次へ 次ページ