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「水資源と持続可能な農業開発」

 

べトナム・カントー大学教授
ボー・トン・ズアン議員

 

議長:イブラヒム・アリ議員(マレーシア国)

 

農業生産における脅威として土壌劣化・漏水・塩害・酸性化があります。また、土壌肥沃度、つまり土中有機物・土壌栄養素の減少も農業生産を制約します。そこで、これらを補うために、肥料を補充しなければならないのですが、米の場合16の栄養素が必要であるにもかかわらず、農民は窒素しか施肥しません。また、農薬も農業生産性を上げるのに不可欠ですが、農薬の過剰散布によって益虫まで殺し、耐性を付けた害虫だけが大量発生したり、これまで、害虫として考えられてこなかったものが、害虫となってきています。
また、種子の耐性の劣化なども生じてきます。農業生産を行う場合、このように様様な克服すべき課題がありますが、水の質・量・管理が非常に重要になってきます。先程、内嶋先生のご講演の中で、地球上の淡水資源の量について厳密なお話がありましたが、理解を容易にするために別の表現でご説明申し上げますと、地球上全体の水を4リッターのビンに入った状態とみなした場合、淡水の量はわずかティースプーン一杯程度しかないのです。
現在、淡水の使用が急激に増えています。現代人は1日に平均400リットルを消費しています。しかしこの水の消費は所得と深い関連があって、貧困者の場合は1日に20リットル程度しか使いません。さらに、農村部では1日1人当たり1リットルも使わない場合があります。つまり、大都市では水の利用が非常に多いのです。
さて、農業生産を行うのにどれくらいの水が必要なのでしょうか。アジアの多くの地域では米を食べています。この米を1日1人が必要とする量だけ作るのに800リットルの淡水が必要となってきます。従って、人口増加に伴う消費の増大に対応するために、日本を除くアジア諸国は灌概対象面積が拡大しています。日本だけが唯一の例外なのですが、これは都市化の影響で農耕地が都市へと変わっていく結果、灌概が不用になってきているためです。
水資源は、今後の増加する人口に対応するためにも、その利用方法を具体的に考えていく必要があります。
この水資源を利用方法としていくつかの提案をしてみたいと思います。まず、“リサイクル可能な水資源”という考え方を導入する必要があると思います。また、持続可能な農業生産のための水資源を考えた場合、具体的な対策としては、既存の灌概・

 

 

 

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