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セッション?U

「人口・水資源・開発-研究発表と討議-」

 

「地球環境と水資源」

官崎公立大学学長
内嶋善兵衛
議長:ハオ・イ・チュン議員(中国)
1. はしがき
火星の地裂内と巨大惑星-木星のエウロパ衛星に水の存在が報告されるまで、水のある惑星は地球だけであった。約46億年前、微惑星群の衝突によるエネルギー放出は、原始地球表層(約1000?qの深さ)をマグマオーシャンとした。熔融したマグマから放出されたガス類は水蒸気大気を作り上げた。
その後温度低下により、水蒸気大気は水分の多くを凝結・降水として失った。そして現在みられるような大洋をもたらした。それは地球誕生の直後であったと考えられている。大量の水の存在は地球大気中の二酸化炭素の炭酸塩としての沈澱を促進した。また、その優れた物理化学的性質により、水は地球表面近くの温度を生物生存域(0〜40℃)に保持し、さらに有害紫外線の効果的な遮蔽材として作用した。
この働きにより、海洋内に生命体が生まれ、進化し現在にいたっている。生命の誕生は約36億年前と考えられているが、その生存期間の約92%は水中であった。すなわち、陸地へ生物群が上陸し始めたのは、成層圏オゾン層により地表の有害紫外線が十分に弱くなった約3億年前であった。それゆえ、水は『生命のゆりかご』と言われている。
このように、地球上の水は地球環境を整え、生命を生み出したばかりでなく、近代の文明社会の発展・維持のための欠くことのできない資源として重要な役割を果たしている。そこで、本小論では地球環境と水資源との関係について簡単に説明する。

 

2. 地球上の水
研究者によって若干の違いはあるが、地球誕生時にマグマオーシャンから絞り出された水量は1373×106?q3に近いと評価されている。これは、地球表面上の水深にすると約2700mになる(ソ連IHD委員会、1974)。莫大な量の水があるように見えるが、その97%は約3%の塩を含んだ海洋水である。多くの陸上生物および人類とその社会が、その生をゆだねている淡水は3%弱にすぎない。その様子を示すと図1のようになる。

 

 

 

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