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「アジア諸国の発展段階別農業・農村開発基礎調査-ラオス国-」

 

東京大学名誉教授
川野重任

 

議長:コリン・ホリス議員(オーストラリア)

 

川野:
調査は1996年7月に予備調査9月に本調査が行われました。調査の主題はラオスの人口問題、家族計画、さらに農業を中心とした経済発展の問題を主題として行いました。
今回の発表では農業を中心とした経済発展の問題を中心として報告を行います。ラオスの問題の重要なところは、ラオスは地理的に海がなく、周りを全部外国に囲まれた内陸国ということです。つまり、北の方は中国並びにミャンマー、東はベトナム、南はカンボジア、西はタイと5つの国に囲まれている国です。したがって、ラオスの国の動きは周りの国に影響する点が非常に多いということのみならず、ラオスは山が非常に多く、1000m以上の山が国土の80%以上を占めるという山国です。しかもその、山、谷、川に遮られていろいろな意味で必ずしも国が統一体をなしていないということが特色としてあげられます。
フランスの植民地時代にこの国は人口が少なく、国土も小さい、したがって、インフラストラクチャーに対する投資は無意味であるとして、べトナムその他に比べてももっとも、投資が行われなかったと言われております。この歴史的事実が今もって強く影響しています。現在も、ラオス全土を結ぶ道路・通信などが徹底して欠如しています。中国との国境付近では中国元が使用され、タイとの国境付近ではバーツが使用されるなど、必ずしもラオスの通貨がすべての地域で徹底して使用されているわけではないことが大きな特色となっています。したがって、この国の経済の水準は低く、民族的にも68の部族に分かれており、ラオス全体として経済の動きが必ずしも明確に把握できない現状にあります。
調査の対象と目的ですが、この国の人口の90%が農林業に従事しているにもかかわらず、農林業から得られる国民所得はわずかに60%以下です。したがって、農林業所得は低く、国内で食料を自給できずに輸入しており、ラオスの総輸入額の10%が食料になっています。90%が農林業人口であるにもかかわらず、自給できていないのです。輸出しているのは「木製品・木材」「織物」「電力」。木材伐採によって森林破壊が進んでいます。
人口の約20%が山腹に、60%がメコン川流域に居住し、残りの20%が山頂地域に住

 

 

 

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