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資料B

−パネラーの見解−

(1)機能要件化と数値基準
日本海事協会 山本博
1 規則の機能要件化の背景
船舶の安全基準に代表されるような経験工学的見地から定められてきた技術規則は、一義的に要件を定めていることが多い。この規則形態は、規制を受ける側及び規則の適合性を判断する側双方にとってその適用および運用は、規則との単純な比較により達成されることから便利なものであった。しかし最近の船舶の安全基準を取り巻く環境は、急速に変化してきており、一義的に規定されている「数値基準」では対応し切れない状況が生まれている。この安全環境に変化をもたらしている背景は?技術の進歩であり?経済的要求からくる船舶の運航状況の変化である。
?の技術の進歩は具体的には解析技術の飛躍的発展や新しい材料および設備の開発があげられる。
?の運航状況の変化は、具体的には船舶の高速化や大型化、船員の問題(多国籍化、定員、教育訓練)があげられる。このような環境の変化を受け入れ、なおかつ安全性を維持していくためには、経験則によった数値規則よりもむしろ合理的な安全思想に基づいた基準が必要とされると考えられる。
さらに、事故を契機とした安全対策強化のために行われてきた規則改正は、数値規則のもとでは、総合的に船舶の安全性が検証されることは少なく、その結果として規則の煩雑化および重複化を来す傾向にある。規則利用者にとって規則の目的や背景がますます分かり難い状況となって来ている。これら数値基準がおかれている状況を改善するために数値基準に代わってまたは並行して、安全上必須の機能を要件として定め、具体的対策は要求される機能を満足することが立証されれば種々の形を取ることが認められる機能規則の導入が提起され研究されている。
2 数値基準と機能規則のメリット/デメリット
両規則のメリット/デメリットを検討するためには、規則の柔軟性および実行性という2面から各規則を比較するのが良いと考えている。一般的には柔軟性の面からは機能規則が、また実行性からは数値基準が勝っているといえる。
・柔軟性−最適設計の可能性 ・実行性−適用および使用
新技術の導入 検査および試験
新設計船の適用と安全性評価 要件の重複
安全レベルの総合評価
3 機能規則導入への課題
機能規則は、安全性を総合的かつ合理的に評価することが可能なことから、将来的な規則のあり方を示していると言える。しかし、この規則形態には、その実行性に疑問および問題が提起されており、導入にあたっては、?適用範囲(広義の機能規則/狭義の機能規則の概念)、?安全基準の制定を含む安全性評価および検証方法の確立、?書類の整備を含む現場検査の方法等解決していかなければならない。

 

 

 

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