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3.6 データベースを用いた操縦性能推定法

船型主要目のような初期設計時に用いられるパラメタを用いて操縦流体力、さらには操縦性能をおよそ把握できれば、船型設計上は大変に有利になるから、本研究では拘束模型試験実績のデータベースから操縦性能を推定する試みを行った。操縦性能を推定するには船体に作用する流体力を表す線形・非線形の微係数と共に、船体・プロペラ・舵間の干渉を表すパラメータの推定が必要になるが、船尾フレームライン形状の影響を含めてデータベースから操縦流体力を求める試みとして、まず線形微係数を対象にした。とりあえずこの線形項がわかれば、船型と針路安定性の関係が把握できるからである。
(1)解析に使用したデータベース
この解析に供する操縦流体力のデータベースとして、本研究で拘束模型試験を実施したA、B、C船型、およびそれらを変形した6隻、計9隻の拘束模型試験結果を使用した。これらの試験結果は共に同一の試験水槽、試験装置、試験法、解析法を用いているから、求められた微係数の値は基本的に船型の違いを反映していると考えることができる。
その他、参加各機関から手持ちの拘束操縦性試験結果も持ち寄り、解析に供した。ただし、このデータの場合、計測されたデータから線形微係数を求める際、可能な限り共通した方法で解析を行うこととしたが、試験の方法、装置等は各機関の方法によるので、必ずしも条件が統一されていない。本来、試験法等の影響は少ないはずであるが、これらのデータを用いて解析した結果は相当にばらつくことが判明し、したがって、今回は上記の9隻のデータから推定式を求めることとし、他のデータは結果の一般性を検証する目的として活用した。
(2)船型を表すパラメータ
線形微係数の推定式の説明変数となるパラメータは、まず主要目であるが、その他に船尾フレームラインの形状を表すパラメータ、特に船尾フレームライン形状を表すパラメータを決め、解析に使用した。このパラメータとして、採用したのは、従来から推進性能の分野でよく使用されるσa[=(1−Cwa、)/(1−Cpa)]である。この他に、操縦流体力に影響を及ぼすと推測されるS.S.1とS.S.2の断面の上半面の面積と下半面の面積の比(Su/SL)1、2やその断面積を水線幅と喫水で除して得られるパラメータ等も検討に加えた。
(3)線形微係数推定式の改良
(a)井上の推定式にブレームライン影響を取り入れる方法
井上らは実用船型の拘束試験結果を整理すると共に、小縦横比翼理論やcross flow theoryに基づく理論的考察から操縦流体力を推定する次式を提案した。

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ただし、k=2d/Lである。上式は従来から幅広く使用されており、ここでは上式を基礎にして主要目の影響を反映し、それに船尾フレームラインの影響を取り入れる形で推定を試みた。まず、井上式で9船型の微係数を推定した結果を縦軸にし、拘束模型試験解析結果に対して図3.6.1に示す。この比較から横力微係数の近似に難点のあることがわかり改善を試みた。既に図3.2.3.2.4に示したよう

 

 

 

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