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理論的に「舵角試験」を取り扱うためには、船体、プロペラ、舵3者間の干渉を考慮した流体力学問題を解かなくてはならない。本節では、2つの機関で開発した理論計算法を用いて、肥型船を対象とした「舵角試験」の計算を実施し、水槽試験結果との詳細な比較により、理論計算法の検証を行う。本節では、各理論計算法の概要ならびに理論計算結果について報告する。
3.4.1 理論計算法
(1)計算法(その1)
船体と舵をRubbertらの定式化にもとづくパネル法、プロペラを山崎、中武の簡易プロペラ理論によって取り扱った。パネル法では、船体(もしくは舵)表面に分布されたソースおよびその中心面に分布したタブレット(渦)で流場を表し、ソースと渦の強さを船体表面条件およびKuttaの条件から求める。これら特異点強さが求まると、ベルヌーイの式から船体表面圧力を計算し、その積分により流体力を求める。船体については伴流を横切る速度成分が0という条件(伴流のKuttaの条件)舵については翼後縁で圧力が等しいという条件(圧力Kuttaの条件)を課す。プロペラについては、精度向上のため、スリップストリーム中での流速について縮流の影響を表す係数を導入した。
(2)計算法(その2)
船体と舵をパネル法の一種であるSQCM法、プロペラを山崎、中武の簡易プロペラ理論によって取り扱った。SQCM法は、吹き出しによるソース分布法と揚力面理論の1解法であるQCM(準連続渦分布法)を組み合わせた手法であり、Sourcce and jquasi Continuous vortex lattice Methodの略称である。船体(もしくは舵)表面に分布されたソース及びその中心面に分布した渦で流場を表し、ソースと渦の強さを船体表面条件と中心面を横切る速度は0という条件から求める。Kuttaの条件は、QCMにもとづき自動的に満足される。ソース渦の強さが求まると、ベルヌーイの式から船体表面圧力を計算し、その積分により流体力を求めることができる。
3.4.2 計算結果とまとめ
図3.4.1に計算法(その1)における船体、プロペラ、舵のパネル分割図を示す。船体、プロペラ、舵の総計で1760パネルを用いた。図3.4.2にSR221A船型を対象にした舵直圧力係数F’Nの比較を示す。見かけのプロペラ前進係数Jが小さいところをのぞき、計算値は実用上の精度で水糟試験結果と一致している。図3.4.3に舵力成分(F'N〜cosδ)をべースとした操舵による船に作用する横力係数Y'Rと回頭モーメント係数N'Rの比較を示す。この曲線の傾きが干渉係数(aH,X'H)となる。計算値は、実用上の精度で水槽試験結果と一致している。図3.4,4にSR221A船型を対象としたaHとX'Hの比較を示す。aHはやや大きめであるが、見かけのプロペラ前進係数Jとともに大きくなる傾向は良い一致を示している。地については、定量的にも実験結果と良い一致を示している。
以上のように、船体、舵、プロペラ3者間の干渉を考慮した理論計算法により、定量的な精度については改良の余地が残されているものの、VLCCのような実用船型の舵直圧力係数や干渉流体力の全般的な特性把握が可能であることが分かった。

 

 

 

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