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3.2.4まとめ

船尾形状がU型、V型、及び、その中間型という3隻のVLCC模型船を中心に、操縦性能推定技術の研究に必要な資料を得るため、種々の模型実験を行った。

拘束模型船による流体力及び流場測定結果には、船尾形状による違いが明確にとらえられ、流場モデルの改良等による主船体に働く流体力推定法の検討、及び、船体・プロペラ・舵の相互干渉の検討に役立てられた。

流体力のデータは、理論及びデータベースによる流体力推定法の研究に加えて、数学モデルの検討にも用いられ、自由航走模型船による実験結果との比較により、通常用いられているMMGモデルは、全般的な運動の特徴はよく表しているが細部については改良すべき点があることや、線形微係数の重要性等が明らかになった。

自由航走模型試験においては、船尾形状の違いが保針性能に大きく影響する様子が明確に示された。流場測定に加えて、船体表面での圧力分布測定データは、主としてCFDによる高精度の流場・流体力推定法の検討に用いられたが、さらに、圧力分布測定結果は、船尾形状の違いによる操縦性能の変化の主因が船尾部の圧力分布の違いにあることを明確にした。

本調査研究における以上の模型実験により、操縦性能推定技術の研究に有益な種々のデータを得ることが出来たが、まだまだ必要とするデータは数多く、実験的検証のもとに更に信頼性ある操縦性能推定法へと発展させるには、今後も着実な実験データの蓄積が必要であろう。

 

3.3船体流体力の理論計算法改良

IMOの操縦性能暫定基準の採択に伴い、設計段階において船舶の操縦性能を精度良く推定する方法の確立が望まれている。操縦性能の精度良い推定のためには、連動時に船体に作用する流体力を正確に推定することが不可欠であり、フレームライン形状等の細かな船型要素の違いを可能な限り考慮することができる理論的な推定法の確立が重要である。そこで本研究においては、現在用いられている流体力計算法を対象とし、主として計算精度の向上を目的とした計算法の改良を行った。

ここでは、主船体流体力の計算法について、6つの機関において検討を行った計算法の概要、ならびに各計算法による船体流体力の推定結果を示す。

(1)流体力計算法(その1)

この流体力計算法は、船体を船幅、吃水が船長と比較して十分小さい細長体であると仮定して、高次の項まで考慮した写像関数を用いて船体横断面を精度良く近似し、伴流を表す離散的な自由渦を付加することによって船体まわりの流場のモデル化を行っている。この方法においては、船体に作用する流体力は各横断面における運動量の変化より求めることができる。船体流体力を推定する上で、伴流を表す自由渦の剥離点の位置は流体力の推定精度に影響を及ぼす非常に重要なパラメータであるが、本計算法では自由渦の剥離点を連ねた線である剥離線をkeel line上に仮定した場合と、計算精度をより向上させることを目的として、剥離線を両舷のビルジ部分に仮定した場合について検討を行っている。また、剥離点から剥離した自由渦の初期位置を表すパラメータSを導入し、模型試験結果との比較・検討に基づき、パラメータSの値を船長方向に変化させることによって推定精度の向上を図っている。

図3.3.1には、本計算法によってSR221A、SR221B、SR221C船型を対象として、横力Yおよび回頭モーメントNの無次元値Y’、N’の推定を行った結果を示している。図中の▽、○、口印はそれぞれSR221A、SR221B、SR221C船型に対する模型試験結果を表し、点線と実船および破線はそれぞれ3船型に対す

 

 

 

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